研究課題
若手研究(A)
本申請期間中に考案した検出原理の骨子は、レンズ焦点面上の強度パターンが、センサー結晶を透過した光の回折干渉の結果生じるフーリエ変換像に対応している点にある。入射レーザーの振幅が純粋なガウス分布である場合、そのフーリエ変換像は、径の小さなガウス分布となって焦点に絞られる。一方、荷電粒子の飛跡に沿って結晶内に屈折率変動が起こっている場合、その干渉パターンの特徴は、焦点から離れたところに顕著に現れる。焦点に集まった光を抑制した上で、焦点から少し離れたところでパターンを2次元的に観測した場合、そのS/Nは理想的にはほぼ無限大になる。このコンセプトを検証すべく、16年度には、150MeVの単一電子線を用いた破壊型を実施した上で、非破壊測定の検証を加速器の単一電子線を用いて検証することであった。経過として、破壊型測定を実施した結果、電子線入射と相関をもったイオン化による遅い位相変動は稀に見えるが、単一電子線透過の統計量が少なく再現性が乏しい結果となった。それを反省して、17年度には、エネルギーが2〜5keV、電流がnA、ビーム径が50μmの電子銃を製作し,軌道のはっきりわかる直流の電子線に対して、その電場の影響を静的にみるシステムを構築した。結晶としてLiNbO3を使用し、レンズ焦点から少し離れた位置に光ファイバー束を配置して、その下流で回折パターンの撮影を行えるようにした。その検知システムを用いて、nAの直流電子線をLiNbO3結晶から100μm離した状態で、電流の有無に応じて干渉パターン変化を確認できるようになった。このように微弱な電流の影響を非破壊的に観測できたのは、世界初であると思われる。今後は、冷却によって、電場から屈折率への変換係数がLiNbO3と比べて1000倍ほど大きくなる結晶を用いて、電子銃の電流値を下げていき検出限界を求めていく。これまでの成果として、非破壊型測定のコンセプトと具体的なセットアップにおける定量的な計算結果を2005年秋季物理学会で報告し、加えて特許申請手続きを終えた。
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