研究概要 |
本研究は、鎖状に連結した金微粒子を用いて空間選択的に注入されたエネルギーがどのような時間・空間スケールで伝播するのか、伝播に伴うエネルギーの緩和や散逸がどのような時間スケール・素過程を通して起こるのかを解明することを目的としている。 本年度前半は、まず鎖状および二次元的に連結した金微粒子がどのような光学的特徴を持つか,エネルギーがどのような時間・空間スケールで伝播するのかを、微粒子内部の位置まで分解して(空間分解能約50nm)解明することを目的として、近接場透過スペクトルと近接場二光子誘起発光測定を行った。 近接場透過スペクトル測定から、波長以下の空間スケールで起こる光子と物質の相互作用について電磁気学的に基本的な情報を得た。また,連結微粒子全体のコヒーレントな励起過程が存在することを明らかにした。さらに,連結微粒子を棒状微粒子とみなしたときに,エネルギーの伝播長が励起波長に依存することを古典電磁気学計算により明らかにした。この結果は,実測の連結微粒子の透過スペクトルの特徴と良く整合する。 近接場二光子励起発光測定から、微粒子間の連結部分で励起確率が高くなること,さらに連結端で励起確率が最大になることを見出した。連結構造体の励起確率イメージを測定し、プラズモンの波動関数との相関を明らかにした。 本年度後半は、金微粒子を色素分子に相互作用させた時に、金微粒子と分子の配置する方向、位置、距離などの違いによりエネルギー伝播の方向や励起確率がどう変化するかを調べるために、連結微粒子とラマン活性分子を相互作用させた系において、近接場表面増強ラマン散乱の測定を行った。 励起確率の連結数依存性から,金微粒子二量体においてもっとも励起確率が高いこと、さらに微粒子の接合部分で励起確率が高くなることを高い空間分解能(<50nm)で可視化することに成功した。金微粒子二量体接合部における分子からのラマン散乱光の偏光特性から、分子配向と局所電場の方向に相関があることを見出した。現在,これら構造体における時間分解ポンププローブ測定を行っている。 平成16年度の成果と合わせて、当初の目標である励起エネルギーの伝播過程やエネルギー散逸過程がどのような時間・空間スケールで起こるかについて理解を深めることができた。また、プラズモンの波動関数の空間形状の測定方法も同時に確立することができた。
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