研究概要 |
本研究課題では、新しいゲルマニウムナノネットワークの創製と、新規超伝導体の発見という目標を掲げ、高圧高温合成を柱とした合成化学的研究を行ってきた。初年度の研究においてSr-Ge系や希土類との二元系において多くの新化合物(SrGe_<6-x>,PrGe_3,NdGe_3,TmGe_3など)の合成に成功したが、超伝導体を見出すことはできなかった。しかし本年度、更に研究を進めた結果、これまでに報告のないゲルマニウム骨格を有する新化合物などを含めて、興味深い化合物の合成ならびに構造解析に成功し、新規な超伝導体を二つ発見することができた。本研究課題採択のおかげで、ゲルマニウムの金属間化合物の化学を大きく広げることができたことを感謝申し上げるしだいである。以下に本年度得られた研究成果の概要を記載する。 【La-Ge二元系】この系では、既に本研究者によってLaGe_5という新規超伝導体が報告されているが、新たにLaGe_3の組成を持つ化合物を合成し、構造解析、EPMA組成分析、電子軌道計算、磁化率測定等によりその構造と物性を研究した。本化合物は超伝導転移温度(Tc)が7.4Kの超伝導体である。最密充填を基本とした層状構造を持っており、この構造はジャーマナイドでは初めての構造である。 【Ba-Ge二元系】この系においても本研究者らによってBa_<24>Ge_<100>という超伝導体が見出されているが、新たにBaGe_3の組成をもつ化合物の合成に成功した。本化合物はGeの三角ユニットが一軸方向に積層してできた一次元カラム構造を持つが、これはGeで初めてのカラム状金属間化合物である。軌道計算の結果、伝導バンドにはBaの5d軌道の大きな寄与が見られ、Ge-4pとBa-5dの軌道の重なりによるバンドの三次元化が、本化合物の電子構造における大きな特徴であると考えられる。またこの化合物も超伝導体であることがわかった。(Tc=4.0K)
|