研究概要 |
アーバスキュラー菌根菌におけるリン酸輸送メカニズムを明らかにするために、リン酸輸送に関与するポリリン酸合成活性の酵素学的特性と菌根特異的なボスファターゼ遺伝子の発現解析を行った。 1.ポリリン酸合成活性の特性解析 外生菌糸からポリリン酸合成活性を有する画分を調製し、この活性の酵素学的特性を調べた。マリーゴールドを宿主として培養した菌根菌の外生菌糸1,000-1,500mgを収穫後、直ちに氷冷した乳鉢上で磨砕し、Percoll連続密度勾配遠心により分画した。比重1.06-1.09gmL^<-1>の画分には、最も高いポリリン酸合成活性が認められたが、液胞型および原形質膜型H^+-ATPaseの活性は検出されなかったことから、液胞や原形質膜にポリリン酸合成活性が存在する可能性は少ないと考えられた。また、ミトコンドリアの混入が予想された。電子顕微鏡観察もこれらのことを裏付けていた。液胞型および原形質膜型H^+-ATPaseの阻害剤、およびプロトノフォアは、ポリリン酸合成活性に影響を及ぼさなかったことから、プロトン勾配が本活性の駆動力とはなっおらず、ATPが直接の基質となりポリリン酸が合成されると結論された。 2.共生特異的酸性ホスファターゼの全長cDNA塩基配列の決定および遺伝子発現解析 共生特異的酸性ホスファターゼのN末端アミノ酸配列15残基を基にPCRプライマーを設計し、3′/5′RACE法によりcDNA(TPAP1)の全長塩基配列を決定した。TPAP1は,1,8kbpからなり,N末端部分に34残基のシグナルペプチドを含む466残基のアミノ酸をコードしていた。RT-PCRとそれに続くサザンハイブリダイゼーションにより、菌根形成によるTPAP1mRNA発現量の変化を調べた。TPAP1の発現量は菌根形成により3〜10倍に増加した。また、TPAP1のC末端に対する抗体を用いたWestern blottingにより、TPAP1の定量を行ったところ、酵素活性の上昇と共にタンパク量も増加していたことから、本酵素の活性は遺伝子発現のレベルで制御されていることが示唆された。
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