研究概要 |
長野県川上村における栽培レタスの根内糸状菌の調査を行った結果,dark septate endophyte(DSE)およびアーバスキュラー菌根菌(AMF)の定着率平均はそれぞれ18.7%および22.9%,定着頻度は100%および79%であった.AMF定着率は土壌可給態リン酸量との間に負の相関があったが、DSE定着率と有意な相関が見られた土壌要因はなかった。分離試験により川上村レタス根内に一つのDSE菌叢型(a型菌)が経常的に優占していることを明らかにした。同菌叢型の分類学的位置をrDNAのシークエンス解析により検討した結果、ルルウォルチア目(フンタマカビ菌綱)のクレードに最も近く位置し、既報のいずれのDSEとも異なる可能性が示された。a型菌に近縁なDSEが長野県高森町の栽培ニホンナシ根部および演習林土壌を用いたレタス苗による捕捉法で分離された,根箱法による本菌のレタス根への定着は接種1日目,皮層細胞内の微小菌核形成は3日目から観察され,5日目以降の定着率は100%であった.レタス由来非病原性Fusarium oxysporumおよびレタス根腐病菌の感染に伴い形成されたパピラは,a型菌の定着では観察されなかった.したがって,a型菌と宿主の関係は中立以上の共生であることが示唆された.a型菌のレタス根腐病に対する生物防除剤としての検討を室内および圃場における接種試験により検討した結果,室内試験の防除価60が最も高かったが,発病抑制効果は菌株および試験ごとに異なった.a型菌を導入したレタスに軟腐細菌を接種し,誘導抵抗性関連遺伝子(MAPK,PDFおよびVSP)および全身獲得抵抗性関連遺伝子(PRla)の発現をRT-PCRにより解析した結果,DSEは誘導抵抗性を引き起こすが,全身獲得抵抗性を誘導しない可能性が示唆された。
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