研究概要 |
物体は光の散乱後に散乱ベクトルと逆向きに運動量を得る。この運動量を光の放射圧と呼ぶ。本研究では,光の放射圧を利用し表面(界面)張力として数値化する装置を開発する。臨界点近傍の気液界面は,僅かな振動で界面が変形または波打ち,メニスカスが消失する。このように外部摂動に敏感な界面を,光の放射圧を用いて非接触に変形させ,その形状変化から表面張力測定を試みる。 ます気液臨界点近傍の界面を観測するための新しい高圧セルをデザインした。セルは四面の窓がつき,圧力は300気圧程度まで耐える設計になっている。温度はPID制御により温度変動を±0.1℃以内に抑えた。本研究で開発する装置に要求されることは,1)高圧下において気液界面の形状を側面から観測可,2)レーザービーム形状がM^2のよいTEM_<00>モード,3)レーザー出力が0-6W程度まで連続可変,である。作成したセル,光学系,検出系CCDカメラを組み合わせ,臨界点近傍における気液界面の測定を試みた。しかし一つの問題が発生した。試料にレーザーを入射するとレーザーの通過部より気泡が発生し沸騰のような現象が観測された。レーザーの波長は532nmで媒体はCO_2であるため電子遷移による光の吸収はない。この気泡はレーザー光の一部がラマン散乱等の非弾性散乱により媒体に僅かにエネルギーを移動し局所的に温度を上げると判断した。この沸騰現象により気液界面がゆらぎ,僅かな界面変形の検出は困難であった。一方,気液臨界点から温度を下げ影響をうけにくい状況でも試みたが,実験行った範囲内では状況は変わらずクーラーならびに結露防止のシステムの導入し,さらに温度を変えることも必要であると判断した。今後はより臨界温度の高い物質またはCO_2の低温側で測定温度を行うことも必要と考えられる。その他,ラマン不活性の流体を用いることもよいであろう。
|