研究概要 |
平成18年度の研究に引き続き,19年度は国際貿易・国際投資と企業のパフォーマンスの間の関係を理論的・実証的に分析し,輸入中間財と国内財の違いが企業パフォーマンスに異なる影響を与えるかどうかをタイ,マレーシア,インドネシアの事業所別のデータを用いて検証した。 主要な発見は次のようなものである。タイ,マレーシア,インドネシアの3ヵ国では外資系企業の生産性が地場企業の生産性よりも平均的に高い。またタイとマレーシアでは輸出入を同時に,あるいは単独に行っている企業のほうが,そうでない企業よりも高い労働生産性を持っている。インドネシアは2004年一時点のセンサス・データでの分析であることを考慮しても輸入と高い生産性との正の強い相関関係が認められた。3ヵ国すべてで輸入中間財の役割はきわめて重要であった。 さらにタイでは貿易障壁は企業の生産性にマイナスに相関しており,貿易自由化の重要性を示唆している。マレーシアではR&D支出や情報関連技術への投資は予想通り,高い生産性と強い正の相関関係があることがわかった。 タイについてはさらに総要素生産性を計測し,詳しく分析した結果,機械輸入,中間財輸入,輸入競争圧力はいずれも総要素生産性にプラスの影響を与えることがわかった。とくに輸入の中でも機械輸入は総要素生産性を押し上げる効果が高いことも明らかになった。ただし,貿易自由化の効果は外資系企業と地場企業に対して異なる可能性が示されている。貿易自由化の直接効果は外資系企業で高く,地場企業で低い。しかし,中間財輸入の総要素生産性に与える効果は地場企業でもきわめて高いことを考慮すると,貿易自由化は中間財や機械輸入を容易にし,その結果,地場企業の生産性を押し上げる可能性がある。
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