研究概要 |
核融合発電の商業化に有望とされる,進行波型直接エネルギー変換器(TWDEC)について,その自励発振動作を模擬的に実現するべく,実験と数値計算の両面から研究を行った.実験では,既設の進行波型直接エネルギー変換模擬実験装置において,減速器外部回路をトロイダルコアと可変コンデンサを用いて構成し,減速器へ変調ビームを入射した際の回路の誘起電圧を調べた.変調電圧に対する回路誘起電圧の利得は,約-75dBであり,過去の実験からの予測よりも低い値となった.過去の結果との差異の検討,特に雑音成分の評価を的確にすべく,電源等高周波系の動作をそのままに,減速器へのビームの流入のみを制御できる堰き止め板を設けた.ビームを堰き止めた状態の信号を雑音とみなして,信号の条件依存性を測定した.その結果,プラズマ生成に伴うと予想される,制御が困難な複数の動作モードを確認し,自励発振動作のためには,プラズマ源の改良が必要と判断された.数値計算では,TWDECの動作を計算で調べるべく,従来の数値計算コードを拡張する方向で研究を進めた.一つは,外部伝送回路の回路動作を組み込むもので,単純なライン型伝送回路を対象として,妥当な計算結果が得られることを確認した.次に,空間1次元を2次元に拡張した.これにより,電極形状の違いによる電界分布の違いや,粒子の電極への衝突などが評価できるようになった.さらに,荷電粒子の作る空間電荷電界を導入した.これについては,ビーム入射口付近に形成された空間電荷電界が予想よりはるかに強く,実験条件のモデル化が不十分であると予想される.空間電荷電界は,自励発振の正確な評価について本質的であるので,これについての改良を今後進める予定である.
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