研究概要 |
これまでの研究で,発癌誘導物質アゾキシメタン(以下AOM)を投与したラットにおいて,牛脂およびコーン油を混合した食餌を摂取した群では発癌作用が増強され,対照的に魚油やオリーブ油を混合した食餌を摂取した群では発癌作用の抑制が見られることを突き止めた.一因としてWnt signalingの亢進に伴う増殖能亢進が考えられた.また,大腸粘膜の脂質酸化度,DNA障害の増加が促進作用の一因と考えられ,酸化ストレスの関与についても興味深い結果が得られた. そこで,発癌作用を増強させた牛脂を混合した食餌を摂取したラットに対し,共役脂肪酸や抗酸化剤,NSAIDなどを摂取させ発癌抑制効果を検討した.ラットを,(1)10%牛脂混合食餌,(2)10%牛脂混合食餌+0.12%COX-1選択的阻害剤(Mofezolac),(3)10%牛脂混合食餌+1%還元型グルタチオン(以下GSH)水,(4)10%牛脂混合食餌+1%G-80(共役リノール酸中性脂肪タイプ),(5)10%牛脂混合食餌+1%80HGR(共役リノール酸遊離脂肪酸タイプ)の5群に分け,それぞれにAOMを投与した.ACF数は(1)群では平均185個のACFを認めたのに対し,(2)で96個,(3)で98個,(4)で114個,(5)で49個といずれの群でも牛脂単独群と比較して有意にACFの発生を抑制することができ,遊離脂肪酸投与群では特に顕著であった.また,12週時における血清TBARSによる酸化ストレスの検討では,グルタチオン投与群で牛脂単独群と比較して有意に酸化ストレスが軽減されており,発癌との関係が示唆された.AOM投与から44週間飼育を続けたラットにおける大腸癌や腫瘍発生数の検討では10%牛脂混合食餌群では多数の腫瘍発生を確認され,Mofezolac群ではAOMを投与した6匹中2匹,80HGR群では6匹中3匹で発癌を認めず,腫瘍の増殖進展において有意な抑制効果が確認できた.
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