研究概要 |
1.研究結果:研究目的は、米軍基地が存在することで日本本島とは異なる地域社会を形成する沖縄を研究対象とし、その要因が沖縄の日本人英語指導者及び学習者の英語学習に対する意識にどう関わっているかを明らかにすることである。英語教員227名、学習者3,597名からのアンケート回答と、英語教員22名、高校生22名、大学生3名からのインタビュー結果をもとに米軍基地の教育的活用の可能性を探った。その結果、以下の点が明らかになった。 (1)英語教員の回答結果: a.政治的・社会的に複雑な問題である基地問題は、たとえ英語教育に利用できるとしても関われない。 b.米軍基地関係者が使用する英語が必ずしも教育的な環境で教えるべき適切な英語ではなく、また学習者に「会話さえできればよい」という誤った認識を持たせている。 c.米軍基地の存在は必ずしも生徒のやる気につながっていない。 (2)学習者の回答結果: a.英語母語話者のように英語が話せるようになりたいと強く願う一方、基地の存在を英語学習に利用することにそれほど積極的ではない。 b.英語学習のために基地やアメリカ人に関わりたい(道で会ったら話しかけてみたい等)という態度が希薄である。 c.基地の存在は、英語学習の動機にはならない。 これらの結果から米軍基地は政治的・社会的に繊細で複雑な問題であり、公的な教育的関わりは皆無に近いといえる。 2.研究実施における問題点:研究計画では授業参観を予定していたが、協力を得られる教育機関、英語教員がいなかったため実施できなかった。また、本研究の主旨に賛同しない教育機関、英語教員がいたことも併せて記しておく。この事実から米軍基地問題が複雑な社会問題であることがうかがえる。 3.今後の研究課題:本研究は、英語教員と学習者を対象としたが、さらに多元的かつ流動的特徴を持つ沖縄社会の複雑な側面を射程に入れて沖縄県民の持つ複合的なアイデンティティと基地問題の関係を多角的に把握しながら、広く一般県民の英語学習に対する意識を探っていきたい。
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