研究概要 |
本年度は,前年度に構築した角膜変形計測システムによる印加力と変位との関係の計測に加えて,プローブと眼との接触面積を同時計測できるように改良し,眼圧と眼剛性との関係についてより詳細な考察を行った.また,広島大学病院の協力を得て,昨年度の実験から被験者を大幅に増やし,7名の緑内障患者をふくむ60名の被験者に対して,力,変位,接触面積の関係を計測した.実験の結果,従来装置により同一の眼圧が推定されていても,その変形応答が大きく異なる眼が存在することを示した.これは従来の装置が眼圧を誤推定するケースがあることを意味する.また眼圧が誤推定されている可能性のある眼を,眼剛性を評価することで判別が可能であることを明らかにした.本研究成果を利用することで,緑内障のスクリーニング検診において眼圧計測に加えて眼剛性計測を行うことで,眼圧の推定誤差の大きい患者を判別できる可能性がある.眼圧の推定誤差が大きいと判断された患者に対しては眼圧検査以外の緑内障検査をすすめることで,今まで見逃されてきた緑内障患者の早期発見への貢献が期待できる.本年度の研究成果は以下の通りである. (1) 前年度構築したシステムをGoldmann型眼圧計と組み合わせることで印加力,眼変位,眼とプローブの接触面積を同時計測できるシステムを構築した. (2) 広島大学病院の協力を得て,緑内障患者を含む60名の被験者に対して実験を行った. (3) 得られた眼の変形応答が,前年度構築した変形モデルの結果と定性的に一致することを確認した. (4) 定性的には眼圧と眼剛性には良好な相関を確認されたものの,個別で見ると同一の眼圧でありながら異なる剛性を持つ眼が存在することを確認し,このような眼に対しては従来の眼圧計測装置が眼圧を誤推定する可能性を示した. (5) 眼剛性を評価することで,眼圧の誤推定が起こるような眼を判別できる可能性を示した.
|