研究概要 |
本年度は, 小分子カルボニル化合物の活性化によるオキセタン類の選択的合成と高度分子変換反応をさらに進める目的で, カルボニル化合物とアルケンとの光[2+2]環化付加反応(Paterno-Buchi反応)でのオキセタン合成について以下の通り実施した。特に, 環状アリルアルコール類とベンゾフェノンとのPaterno-Buchi反応において, 生成物のジステレオ選択性について調査した。 1. 水酸基が結合した環状フリルアルコール誘導体を基質として, ベンゾフェノンとのPaterno-Buchi反応を行なった。数種の環状フリルアルコール誘導体を用いて, 様々な反応溶媒, 反応温度ならびに反応濃度でのベンゾフェノンとのPaterno-Buchi反応を行い, 生成物を詳細に解析した。その結果, 生成物のジアステレオ選択性に対して, 溶媒効果, 濃度効果および反応温度の効果が認められた。とくに, 反応温度の効果は顕著であった。これまで, 鎖状アリルアルコールとベンゾフェノンとのPaterno-Buchi反応におけるジアステレオ選択性は, 水素結合による効果が提案されてきた。しかしながら, 環状フリルアルコール誘導体とベンゾフェノンとのPaterno-Buchi反応におけるジアステレオ選択性は, 水素結合による効果よりむしろ反応温度による効果が大きいことを見出した。 2. 環状フリルアルコール誘導体とベンゾフェノンとのPaterno-Buchi反応において観測された立体選択性および位置選択性を理解するため, 量子計算による詳細な解析を行った。現在, モデル化合物を用いて, 反応中間体であるビラジカルの構造を推定し, 反応経路の検討を行っている。
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