研究課題/領域番号 |
19890257
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研究種目 |
若手研究(スタートアップ)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物系薬学
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
石原 康宏 徳島文理大学 座, 香川薬学部 薬理学講, 助教 (80435073)
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研究期間 (年度) |
2007 – 2008
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研究課題ステータス |
完了 (2008年度)
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配分額 *注記 |
3,075千円 (直接経費: 2,670千円、間接経費: 405千円)
2008年度: 1,755千円 (直接経費: 1,350千円、間接経費: 405千円)
2007年度: 1,320千円 (直接経費: 1,320千円)
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キーワード | チトクロムP450 / 心筋梗塞 / 再灌流障害 / 酸化ストレス / 再灌漑障害 |
研究概要 |
心筋梗塞は、国内外に多くの羅患者がおり、死因の上位に位置する。心筋梗塞の治療は、経皮的冠動脈形成術や血栓溶解療法により行われるが、これらの治療により血流が回復した直後、心筋はさらに障害を受ける(再灌流障害)。心臓再灌流障害には活性酸素が関与するため、その治療薬として抗酸化薬の開発が進められてきたが、その治療効果は低く、臨床応用には至っていない。抗酸化剤よりも効率的に細胞内活性酸素量を減らすためには、活性酸素生成源に直接作用し活性酸素生成を阻害する薬剤が必要である。しかしながら、心臓再灌流障害における活性酸素生成源は未だに特定されていない。 申請者は、薬物代謝酵素であるチトクロムP450 が基質代謝の有無に関わらず活性酸素を生成すること、また、チトクロムP450 より生成された活性酸素により細胞が障害されることを報告し、チトクロムP450 が生理的、病態生理的に活性酸素生成源となっている可能性を提示した。さらに、ランゲンドルフ灌流心を用いた実験により、チトクロムP450 阻害薬が再灌流障害を抑制することを示し、心臓虚血-再灌流障害において、チトクロムP450 が活性酸素生成源となっていることを示唆した。本研究では、in vivo 心筋梗塞モデルラットを用いて、チトクロムP450 が心臓虚血-再灌流障害における活性酸素生成源であることを示し、チトクロムP450 阻害薬の再灌流障害治療薬としての可能性を探ることを目的とする。 ラット冠状動脈左前下行枝を1 時間結紮後に、24 時間再灌流するラット心筋梗塞モデルを用いた。再灌流24 時間後、梗塞巣の大きさを評価したところ、コントロールでは虚血領域の約50% に梗塞巣が見られた。チトクロムP450 阻害薬であるスルファフェナゾール、または、シメチジンを再灌流時に投与したところ、再灌流による梗塞巣の進展を濃度依存的に抑制した。その抑制作用は、シメチジンと比較して、スルファフェナゾール方が強かった。また、チトクロムP450 阻害薬は、再灌流障害で悪化した心機能を改善した。次に、チトクロムP450 と酸化ストレスとの関連を調べた。チトクロムP450 阻害薬投与時の心筋中過酸化脂質量を測定したところ、再灌流により増加した過酸化脂質は、チトクロムP450 阻害薬投与により減少した。また、心筋中の活性酸素量を調べたところ、再灌流により増大した心筋活性酸素は、チトクロムP450 阻害薬の投与により減弱した。次に、チトクロムP450 阻害薬のin vivo における心筋チトクロムP450 阻害活性を、テストステロン代謝を指標に測定した。スルファフェナゾールは、心筋チトクロムP450 を有意に阻害する一方、シメチジンは、心筋チトクロムP450 を阻害する傾向が見られたものの、有意差は認められなかった。 以上の結果は、心臓虚血-再灌流障害における活性酸素生成源はチトクロムP450 であることを示している。チトクロムP450 阻害薬は、心筋チトクロムP450 の阻害により活性酸素生成を抑制し、酸化ストレスを減弱することにより再灌流障害に奏功する。チトクロムP450 阻害により梗塞巣の進展が抑制されるだけでなく心機能も改善することから、チトクロムP450 阻害薬は有効な再灌流治療薬となる可能性を秘めている。
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