研究概要 |
今年度の主要な研究活動とその成果は以下の通り。 まずヨーロッパ各国の歴史教育において図像が占める役割に対する認識の変遷を確認するため,ドイツの国際教科書研究所において特にドイツとフランスの歴史教科書を例に,それがテキスト中心の構成から図像(およびグラフ・表)を重視した構成へと変化した時期を探った,その結果,初等教育と中等教育で転換期は異なり,まず初等教育で始まった変化が次第に中等教育に及ぶに到ったという展開が確認された。また,この調査の過程で,歴史教育と図像との関係には,従来の学習内容を前提として図像が教育方法論的な観点から注目・使用されるケースと,個々の図像そのものが新たに美術史的ないしメディア論的に価値を持つ学習内容として位置づけられるケースという二つの段階があり,時間とともに後者に分類されるケースが増えているという認識が得られた。 なお上記の国際教科書研究所とのあいだでは,日本の歴史教科書におけるヨーロッパ像についての調査を行うことで,同研究所の研究プロジェクトに協力し,その成果をウェブ上で公開した。また,国際教科書研究所を訪問した際に,あわせてバーデン・ヴュルテンベルク州立政治教育センターを訪問し,歴史教育におけるヨーロッパ学習の中で図像がどう活用されているかについてインタヴュー調査を行った。 そのほか研究計画に基づき,これまでに本研究で得られた知見が日本の高校での歴史教育に対して持つ可能性を検討するため,勤務校開催のサマースクールにおいて高校生を対象にした実験的な授業を行ない,受講者からは経験したことのない全く新しい歴史の授業であるとの反応を得た。
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