1.研究目的:電子ジャーナル利用状況の把握と購読契約への反映は、高等教育機関での教育研究経費の有効活用に不可欠である。しかし、現在、我が国においては、出版社が作成する電子ジャーナルの利用統計の国際標準(COUNTER)形式のデータを効率的に入手・活用するツールがない。本研究は、国内でCOUNTER形式の統計データを簡便に取得・可視化し、自機関の電子ジャーナルの利用状況を分かりやすく表現できるクライアントソフトウェアの設計を行うことを目的とした。 2.研究方法:(1)COUNTERと、COUNTERデータを取り扱える通信プロトコルSUSHIの仕様の把握に努めた。(2)世界各国の学術雑誌購読契約コンソーシアム会議に出席し電子ジャーナル及び出版社の最新動向について情報収集を行った。(3)日本の大学図書館コンソーシアム連合事務局及び科学技術政策研究所への訪問調査により、国内の電子ジャーナル契約状況、出版社の動向について意見交換を行った。(4)先行事例である英国情報システム合同委員会(JISC)開発のJournal Usage Statistics Portal (JUSP)を調査し、現地にて担当者に聞き取り調査を行った。(5)電子ジャーナル利用統計ツールのプロトタイプ「EDOMAE」を試作し、近隣大学の担当職員およびJUSTICE担当者と意見交換を行った。 3.研究成果:COUNTER及びSUSHI仕様に沿い、SUSHIクライアントのプロトタイプを試作した。ウェブ上でゲートウェイとして動作し、任意の大学の任意の電子ジャーナルの利用統計をグラフィカルに表示する。ただし、利用統計の大学間での共有等については、調査先の英国でも、我が国でも、購読契約条項において制限されていることが多く、研究成果の広汎な適用のための本試作ソフトウェアの本格運用には、今後そうした社会的環境面における条件整備が課題である。
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