研究課題
基盤研究(C)
脂肪細胞分化を促進する転写因子PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ)は核内レセプター型転写因子の一つであり、脂肪酸代謝産物や2型糖尿病改善薬であるチアゾリジン誘導体などをリガンドとして直接結合する事で特異的DNA配列に結合し、標的遺伝子のmRNA転写を活性化する。更にPPARγは骨芽細胞分化抑制や破骨細胞分化促進にも機能するため、骨代謝における調節因子としての側面もある。一方、既知の骨芽細胞分化促進因子としてBMP/TGFβシグナル、Wntシグナルやサイトカインシグナルが存在する。これらは前駆脂肪細胞3T3-L1等を用いた分化実験では抑制機能が報告されているが、間葉系幹細胞における機能は不明であった。そこで申請者は間葉系幹細胞の培養細胞株で脂肪細胞および骨芽細胞に分化可能であるST2細胞を用い、主にPPARγ活性制御シグナル解明の観点から脂肪細胞・骨芽細胞分化振り分けの分子機構に関する研究を遂行して来た。申請者は以前に、PPARγリガンド刺激とBMP2刺激の順番を入れ替えるとPPARγ結合配列近傍において、ヒストン修飾を変化させる現象を見出し、その成果をPPAR Research誌に掲載した(PPAR Res. 2012;2012:60714)。この結果を踏まえ、骨芽細胞促進に作用する転写因子c-Fosに関し、PPARγとBMP2シグナルの影響をマイクロアレイで検討した。その結果、c-fos発現等に関し刺激順依存的な発現変動は観察されなかったものの、特徴的な発現変動を示す遺伝子の同定に成功した。またPPARγが所属する核内レセプターファミリーの一つで免疫細胞分化を司るRORγtに相互作用し、PPARγにも作用し得る新規転写共役因子としてDGCR14を見出した。この因子はRORγtを活性化させる役割を担い、その成果は論文としてMCB誌に掲載された。
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