研究期間内に、18~19世紀イギリス演劇における女性表象の変遷をたどり、18世紀初期には、活力に満ちた女性たちが、19世紀末までのあいだに、次第に自由を奪われていく傾向の一端を明らかにした。1720年代のシェイクスピア歴史劇改作では、英国の「強い」王の代名詞ともいえるヘンリー五世の武人としての側面が影を潜め、代わりに、女性たちが活躍の場を広げていることに着目し、同時代の政治状況を踏まえて論じた。1892年にロンドンで初演されたWilliam Poelによる翻案劇『モルフィ公爵夫人』のヒロインのセクシュアリティ表象が削がれている点については、初演当時の社会的文化的背景と重ね合わせながら考察した。
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