研究分担者 |
ALEXANDER Ve アラスカ大学, 海洋研究所, 教授
MCROY Peter アラスカ大学, 海洋研究所, 教授
大塚 攻 広島大学, 生物生産学部, 助手 (00176934)
松田 治 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (60034469)
谷村 篤 国立極地研究所, 研究系, 助手 (10125213)
志賀 直信 北海道大学, 水産学部, 助手 (30091466)
川口 弘一 東京大学, 海洋研究所, 教授 (40013586)
河村 章人 三重大学, 生物資源学部, 教授 (10111163)
BRENDAN Kell アラスカ大学, 海洋研究所, 研究員
TRIPP Richar ワシントン大学, 海洋学部, 教授
西山 恒夫 北海道東海大学, 工学部, 教授 (70001609)
渡辺 研太郎 国立極地研究所, 研究系, 助手 (30132715)
佐藤 博雄 東京水産大学, 助手 (60114914)
山口 征矢 埼玉大学, 教養部, 教授 (70114220)
服部 寛 北海道東海大学, 工学部, 助手 (60208543)
佐々木 洋 石巻専修大学, 理工学部, 講師 (10183378)
高橋 正征 東京大学, 理学部, 助教授 (50111357)
半田 暢彦 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (00022559)
谷口 旭 東北大学, 農学部, 教授 (30002091)
福地 光男 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (80099936)
KELLY Brendan IMS, UA, Research Associate
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配分額 *注記 |
22,000千円 (直接経費: 22,000千円)
1990年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1989年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1988年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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研究概要 |
「北極海海氷域における基礎生産とエネルギ-移動の時系列的変動の研究」は昭和63年度からの3年計画であった。本研究はこれまでの研究では空白地帯となっている季節的に海氷におおわれる海域を対象とし、海表層の基礎生産過程およびその深層への沈降過程を時系列的に明らかにすることを目的とした。同時に、エネルギ-移動の過程における動物プランクトンの役割を明らかにすることであった。 北部ベ-リング海及びチャクチ海は季節的な海氷域とし、また、海洋生産力が高い海域として知られており、アラスカ大学海洋研究所を中心として、「大陸棚上における物質・エネルギ-の移送と循環」の研究計画(ISHTAR計画と略)が米国科学財団のDPP計画として行われていた。ISHTAR計画では北部ベ-リング海から、アナディ-ル海流の北方流にそって、ベ-リング海峡を通り北極海チャクチ海へかけて海洋基礎生産が高いことを観測していた。しかし、基礎生産から底生生物への物質エネルギ-の流れは実測されておらず、両者間のカップリングが不明であった。 本研究ではセントロ-レンス島とベ-リング海峡との間にあるチリコフ海盆にて、自動観測システムの長期係留実験を主体とした。同システムは時間分画式連続採水器、デ-タロガ-、セディメント・トラップ(沈降粒状物採集器)から構成され、ある期間海中に係留した後、回収するものである。6月から9月にかけての実験で、8日毎に合計12のトラップサンプルを得た。これより有機炭素量や窒素量を測定したところ、炭素量は253〜654mg/m^2/dayであり、海洋の沈降炭素フラックスとしてはかなり高い値であった。また、炭素と窒素の元素比(C/N比)は、4.9〜7.4とかなり低く、これは観測期間を通して、かなり新鮮な有機物が表層から海底へ向かって沈降していることを示した。同海域における豊富な底生生物群集の存在、また、それを餌とする鯨類の濃密分布は、とりもなおさず基礎生産の約1/4が連続して沈降することによることが明らかとなった。また、トラップ内のサンプルには、動物プランクトンの糞粒が多量に見られ、炭素フラックスに換算すると、全フラックスの約45%が糞粒によって占められていた。残りの部分は自然沈降した植物プランクトンによって占められ、主要な珪藻類は11属31種であった。 トラップの上方の海表層18mに設置された連続採水器は、同期間、3.5日毎に合計30の海水標本を採水した。全標本から出現した珪藻類は84種であり、全細胞数は海水1リットル中に78,800から6,044,200細胞数まで変化した。出現細胞数から3グル-プに分けると(1)100万細胞以上では、Nitzschia grunowii、(2)50万〜100万ではThalassiosira属とNitzschia属、それに(3)10万〜50万では、Chaetoceros laciniosum、Ch.mitra、Leptocylindrus danicus、Thalassiosira gravida、T.hyalina、T.nordenskioldii、Nitzschia islandica、Thalassiosila nitzschioidesであった。採水器から得られた植物プランクトン出現種の時系列的な変動パタ-ンは、トラップから得られた情報と概略一致しており、同海域においては、基礎生産物が急速に沈降していることが明らかとなった。 長期係留実験に並行して、3年間で合計5研究航海が実施され、北緯62度から69度、西経165度から172度の範囲内において、合計77観測点から動物プランクトン標本が得られた。動物プランクトンの出現個体数において、橈脚類が最優占しておりとりわけPseudocalanus minutusが優先種であった。橈脚類については底生生物の幼生(フジツボ)が多量に出現した。橈脚類について観測点間で類似度指数を用いたクラスタ-分析を行った結果、同海域に3つのグル-プが検出された。3グル-プの地理的な拡がりは、東西方向にアラスカ沿岸水、大陸棚水、アナディ-ル海流の水塊区分に対応していた。セディメント・トラップ内に混獲された動物プランクトンの時系列的変化を質的に解析すると、3水塊の東西方向の空間的拡がりに対応することが指唆された。
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