研究概要 |
Hellon et al.)(1973)がラット脊髄、さらに上位の中枢神経内に陰嚢温度刺激に応答するニュ-ロンが多く存在することを見い出して以来、この系は温度感覚情報の求心路のモデルとして多くの解析がなされてきた。ところがこれらのニュ-ロン応答は覚醒に伴う非特異的な反応であることが最近明らかになった(Kanosue et al.,1984,1985)。そこで本研究では,実際にラットが陰嚢温度変化を感覚し得るかについてオペラント行動の解析から検討した。昭和63年度は実験システムの開発,作成を行った。ペルチエ素子の温度を0.1℃の精度で制御可能なcontroler及び電気刺激装置をパソコン(PCー9801RA)にて駆動し、また温度、レバ-押し・電気刺激の時刻情報も同じパソコンに入力してデ-タ解析が行えるようにした。本年度はそのシステムを用いて実験を行った。遮光・防音箱中におかれたレバ-付き小ケ-ジにラットを入れ、陰嚢温度刺激用ペルチエ素子、尾電気ショック用電極を装着、陰嚢温を正常値(32℃)からある温度(42℃以下)までステップ状に変化させ、一定時間(10秒)後にショック(1ms,5mA)を加える。温度変化後ラットがレバ-を押せば温度は正常値に戻り、ショックは回避できる。この行動のオペラント条件付けが起これば、ラットは陰嚢温度変化を感覚していることになる。11匹のラットで実験を行ったが、残念ながら条件付けには1匹も成功しなかった。しかしこの結果だけからラットは陰嚢の温度変化を知覚していると即断は出来ない。陰嚢温変化が刺激回避の条件刺激としては弱い可能性が否定できないからである。将来機会が有ればこの点にも検討を加え、温度感覚の問題をさらに解析して行きたい。
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