Project Area | Glia decoding: deciphering information critical for brain-body interactions |
Project/Area Number |
20H05902
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (III)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小泉 修一 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10280752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠崎 陽一 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 副参事研究員 (10443772)
繁冨 英治 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00631061)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥102,310,000 (Direct Cost: ¥78,700,000、Indirect Cost: ¥23,610,000)
Fiscal Year 2024: ¥18,850,000 (Direct Cost: ¥14,500,000、Indirect Cost: ¥4,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥20,410,000 (Direct Cost: ¥15,700,000、Indirect Cost: ¥4,710,000)
Fiscal Year 2022: ¥19,890,000 (Direct Cost: ¥15,300,000、Indirect Cost: ¥4,590,000)
Fiscal Year 2021: ¥18,590,000 (Direct Cost: ¥14,300,000、Indirect Cost: ¥4,290,000)
Fiscal Year 2020: ¥24,570,000 (Direct Cost: ¥18,900,000、Indirect Cost: ¥5,670,000)
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Keywords | ミクログリア / 全身監視 / 脳ー末梢連関 / アストロサイト / アレキサンダー病 / インターフェース / 監視 / デコーディング / 細胞置換 / グリア細胞 / 移植 / 細胞治療 / ヒトiPS細胞 / ミクログリア-免疫連関 / ミクログリア機能 / iPS細胞由来ミクログリア |
Outline of Research at the Start |
本計画研究はミクログリアの置換技術開発により、ミクログリアデコーディングが全身監視・制御に果たす役割を、睡眠覚醒サイクル研究(史班)及びエクソソーム研究(星野班)との緊密な相互連関により明らかにする。先ず全脳レベルでミクログリアを非侵襲的に細胞置換する技術「リセット」及び「グラフト」を開発する。次いで種々ミクログリア置換が脳及び末梢機能に果たす役割を、神経及びグリア細胞の微細同時Ca2+イメージング法を主体として明らかにする。さらに、疾患iPS細胞由来ミクログリアの移植に挑戦し、各班に提供することでミクログリアデコーディングが媒介する脳及び末梢疾患を理解するチャレンジングな課題も行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「ミクログリアによる全身監視・制御メカニズムの解明」であり、ミクログリアが脳内外の環境変化をどのように感知し、デコーディングすることで脳機能・全身機能を制御するのかを明らかにするものである。本年は、脳内のアストロサイトの遺伝子変異を感知し、分子病態を制御するデコーディング機構を明らかにした。実験には、アレキサンダー病(AxD)モデルマウスを用いた。AxDはグリア細胞「アストロサイト」特異的な遺伝子GFAPに変異が入ることで起こる難治性の神経変性疾患である。従ってこれまでのAxD研究は殆どアストロサイトに注目して行われてきた。しかし、AxDマウスでは、もう一つのグリア細胞「ミクログリア」が強く活性化していた。先ずAxD病態における活性化したミクログリアの役割を明らかとした。(1) ミクログリアの機能及びメカニズム。AxDミクログリアでは、P2Y12受容体を介するCa2+シグナルが亢進していた。(2)P2Y12受容体機能亢進メカニズム。ミクログリアP2Y12受容体の発現レベルは変化していなかったが、AxDアストロサイトでNTPDase2の発現が低下していることが明らかとなった。NTPDase2は細胞外ATPの分解酵素である。従ってAxD脳では、アストロサイトの細胞外ATP分解能が低下し、上昇したATPをミクログリアがP2Y12受容体で感知してCa2+シグナルを亢進させていることが明らかとなった。(3)ミクログリアP2Y12受容体機能亢進の意義。ミクログリアP2Y12受容体を抑制すると、AxDの病態が悪化した。以上、ミクログリアは、AxDアストロサイトの異常を細胞外ATP上昇としてP2Y12受容体で感知し、自身のCa2+シグナルを亢進させることで、AxD病態を抑制性に制御していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の2点により、ミクログリアによる脳内監視・デコーディング機能を明らかにすることができたため、当初の計画以上に進展したと結論した。 (1)一次性アストロサイト病であるアレキサンダー病(AxD)モデルマウスを用いた研究により、ミクログリアがその異常を感知するメカニズムを明らかとしたこと。AxDはグリア細胞「アストロサイト」特異的な遺伝子GFAPに変異が入ることで起こる一次性アストロサイト病である。従ってこれまでのAxD研究は殆どアストロサイトに注目して行われてきた。しかし、AxDモデルマウス脳では、アストロサイトだけでなく、もう一つのグリア細胞である「ミクログリア」が強く活性化していることを見いだすことができた。また、ミクログリアがアストロサイトの異常を感知するメカニズムとして、1細胞RNAシークエンシングによる解析により、AxDアストロサイトでNTPDase2の発現が低下していることを見いだすことが出来た。NTPDase2は細胞外ATPの分解酵素であるので、AxD脳ではアストロサイトの細胞外ATP分解能が低下し、細胞外ATP濃度が上昇していた。これをミクログリアがアストロサイトの異常として、P2Y12受容体で感知していたのである。 (2)ミクログリアP2Y12受容体シグナルの意義を明らかにしたこと。血液脳関門透過性のP2Y12受容体拮抗薬を用い、ミクログリアP2Y12受容体を抑制した。するとAxDのバイオマーカーであるローゼンタル線維の蓄積が増加し、神経細胞異常も亢進した。従ってミクログリアP2Y12受容体拮抗薬には、AxD病態を増悪させる作用があることが明らかとなった。つまりミクログリアはAxDアストロサイトの異常を細胞外ATP上昇としてP2Y12受容体で感知し、Ca2+シグナルを亢進させることで、AxD病態を抑制性に制御していることを明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2点に注目して研究を進める。(1)アレキサンダー病(AxD)の分子病態の解明。AxDは、グリア細胞『アストロサイト』特異的な遺伝子GFAPに変異が入ることで発症し、けいれんや精神発達遅滞等の神経症状を呈する難治性の神経変性疾患である。しかし、アストロサイトのGFAPに変異が入ると、なぜこのような神経症状が起こるのかについては不明のままであった。これまでに、AxDモデルマウスでミエリンが脱落し、脱髄部位にアストロサイトが集積していることを見いだしている。そこで、AxDの分子病態をアストロサイトによるミエリン貪食の視点から明らかとする。(2)昨年までに、アストロサイトの異常をP2Y12受容体で感知したミクログリアは、AxDに対して保護的な作用を示すことを見いだした。そこで、本年はミクログリアがP2Y12受容体を介しAxD病態を抑制する分子メカニズムを明らかとする。1細胞RNAシークエンス解析を中心に据え、各種生化学的・分子生物学的手法、さらに機能解析により補完しながら研究を進める。
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