Project Area | Ultra-High-Definition Mental Health Care by Digital-Human Integration: New Strategy for utilizing Multi-Modal, Big, and Precision Data |
Project/Area Number |
21H05068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (I)
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
樫原 潤 東洋大学, 社会学部, 助教 (10788516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 大地 筑波大学, 人間系, 助教 (10826720)
国里 愛彦 専修大学, 人間科学部, 教授 (30613856)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥27,300,000 (Direct Cost: ¥21,000,000、Indirect Cost: ¥6,300,000)
Fiscal Year 2023: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2021: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
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Keywords | ネットワーク解析 / 心理療法 / 感情障害 / 作用機序 / 精密精神医学 / ネットワーク分析 / 認知行動療法 / Process-Based Therapy / うつ病 / 不安症 / 精神病理 / 数理シミュレーション |
Outline of Research at the Start |
うつ病・不安症治療の効果研究は,「個別症状」「個別技法」の多様性を捨象し,「うつ病・不安症には認知行動療法が効く」という概略的な知見を示すにとどまっていた。この限界を克服するため,本研究は,数理統計学のネットワーク理論を適用した患者データの分析を展開する。具体的に,①うつ病・不安症の個別症状間の相互作用を偏相関ネットワークとして視覚化し,中核症状を特定する。また,②偏回帰ネットワークに基づき,認知行動療法の個別技法がどの個別症状に効くのか,作用機序を解明する。数理モデルを駆使した検討により,心理支援の諸側面を可能な限りデータで記述し,人間が行う治療への還元を図っていく。
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Outline of Annual Research Achievements |
「心理療法を受けた患者のデータに対して,数理統計学のネットワーク理論に基づく分析を適用し,精神病理のネットワーク構造や治療の作用機序を解明する」という研究課題のなかで,当該年度は,うつ病・不安症の個別症状間の相互作用を偏相関ネットワークとして視覚化して中核症状を特定するための分析を引き続き実施するとともに,時系列データ分析を実施して症状間の経時的関連を検討した。また,患者データの分析を行うなかで,「精神症状についての項目だけを用いて推定を行うと,ネットワーク構造の様相が理論と一部整合しないものになってしまう」ということが明らかになったことを受け,治療の作用機序変数を測定する質問紙尺度の日本語版の開発を進めるとともに,仮想の作用機序変数をネットワーク構造に組み込んだ数理シミュレーションを推進した。2022年度の途中,日本語版尺度の翻訳状況のチェックを英語原版の開発者に依頼したところ,先方都合による大幅な遅れが生じたが,経費繰り越しを行った2023年度には無事に日本語版尺度を完成させることができた。 これらの研究成果について国内学会で発表を行うとともに,前年度までに蓄積した研究知見の論文化に取り組み,国内外の学術誌で合計15本の査読付き論文を発表することができた。さらに,国内学会での様々なシンポジウムで,研究班のビジョンを参加者と広く共有することができた。このように,データ分析が進んだだけでなく,多数の論文業績が蓄積され,国内で活発に学会発表を行うことができた。日本語版の質問紙尺度という具体的なツールも完成させることができたため,これまでに取り組んだ成果が順調に実り,研究課題を今後よりいっそう発展させるための土台を築くことができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,2021年度から取り組んできた既存の患者データを用いた分析を継続し,偏相関ネットワーク構造の推定を精緻化するのみならず,患者たちが抱える個別症状同士の経時的関連(時点をまたいだ予測性)にまで踏み込んで分析を行うことができた。そして,分析結果に基づき,「症状変数のみならず作用機序変数も含んだネットワーク構造を今後分析する必要がある」という課題を浮き彫りにすることができた。この課題に応えるべく,作用機序変数を測定する質問紙尺度の日本語版開発に取り組んだところ,英語原版の開発医者によるチェックが先方都合で遅れ,思わぬ遅延に見舞われることになった。しかし,繰越年度の2023年度には,日本語版尺度の開発を無事に終えることができた。また,日本語版尺度の開発が遅延している間には,作用機序変数を含んだネットワーク構造の数理シミュレーションを進めることができ,学会発表や論文化の準備を整えることができた。患者データを用いて症状間の経時的関連を検討することや,作用機序変数まで含めたネットワーク構造の数理シミュレーションは国際的に見て希少な取り組みであり,先進的な成果を順調に蓄積できたといえる。 また,「研究実績の概要」に示したように,これまでの研究成果を合計15本の査読付き論文という形で国内外に発信することができた。こうした論文を発表することにより,研究班のなかで理論的基盤が整理され,実データのネットワーク分析や数理シミュレーションを今後さらに段取りよく進めていくための土台が整った。 このように,質問紙尺度の日本語版開発という側面では思わぬ遅延を余儀なくされたものの,先駆的な分析を着実に進めることができ,今後のさらなる発展につなげるための理論的基盤を整えることができた。査読付き論文を多数出版できたことも踏まえると,おおむね順調に研究が進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に積み重ねた分析結果は国際誌に積極的に投稿し,研究知見を世界に向けて発信していく。また,論文投稿や学会発表だけではなく,ネットワーク分析という同じテーマに取り組む海外の研究室を訪問し,研究班の取り組みを知ってもらうとともに,国際共同研究への足がかかりを作っていく。また,完成した日本語版尺度を使用して新規にデータを収集するとともに,その尺度の開発プロセス自体についても学会発表や論文といった形で発信していき,国内の尺度開発研究の水準向上に貢献していく。 また,新規性の高い心理ネットワークアプローチを使いこなせる研究者が日本にはまだまだ少ないことを踏まえ,学会でのワークショップや英語テキストの翻訳出版といった企画を積極的に推進し,業界全体の活性化を図っていく。さらに,心理ネットワークアプローチの将来的な臨床応用を見越して,Process-Based Therapy (PBT) を日本で普及させるためのコミュニティづくりに注力し,PBTを題材とした学会シンポジウム等を開催し,英語テキストの翻訳出版を進めていく。PBTとは,ネットワーク科学の発想や枠組みを借りた,一人ひとりの患者にあったテーラーメイドの治療を推進するためのアプローチであり,国内外の臨床家から大きな注目を集めている。このPBTを普及させ,ネットワーク科学の発想を臨床に取り入れる価値を示すとともに,心理ネットワーク分析を臨床応用するという将来のビジョンを示す。また,そうしたビジョンを展望論文という形にまとめ,国際誌に投稿して海外の研究者ともビジョンを共有していく。これらの取り組みによって,心理ネットワークアプローチへの認知度を国内で高めるとともに,国際的な注目度を高めていき,国内外の新たな共同研究者とともに今よりもっと刺激的な研究知見を示せるようにしていきたい。
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