Project Area | The Natural Laws of Extreme Universe--A New Paradigm for Spacetime and Matter from Quantum Information |
Project/Area Number |
21H05188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (II)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遊佐 剛 東北大学, 理学研究科, 教授 (40393813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 尚和 東北大学, 理学研究科, 教授 (40302385)
堀田 昌寛 東北大学, 理学研究科, 助教 (60261541)
米倉 和也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90769043)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥231,400,000 (Direct Cost: ¥178,000,000、Indirect Cost: ¥53,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥22,100,000 (Direct Cost: ¥17,000,000、Indirect Cost: ¥5,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥22,230,000 (Direct Cost: ¥17,100,000、Indirect Cost: ¥5,130,000)
Fiscal Year 2022: ¥24,570,000 (Direct Cost: ¥18,900,000、Indirect Cost: ¥5,670,000)
Fiscal Year 2021: ¥146,250,000 (Direct Cost: ¥112,500,000、Indirect Cost: ¥33,750,000)
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Keywords | 量子宇宙 / 量子多体系 / 量子情報 / トポロジー / 半導体デバイス / 半導体ナノ構造 / 量子ホール系 / 数値計算 / ブラックホール / 半導体ナノテク |
Outline of Research at the Start |
ビッグバンのような宇宙創成の初期段階で現れる「量子宇宙」と呼ばれる極限的に小さな宇宙からどのようにして我々の住む宇宙が創成されるか、その過程をそのまま実験室で再現するのは困難である。そこで本研究では量子宇宙と理論的に似た状態(同じ式で記述できる量子宇宙のトイ模型)を、半導体チップの上で実現し、最先端のナノテクノロジーやエレクトロニクスを駆使して実験を行い、理論と照らし合わせることで、宇宙創成のメカニズムを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
実験的な側面としては、エッジの古典膨張の実空間実時間観測のための基礎技術であるピコ秒時間分解システムをさらに改良し、積算時間やSN比の向上を行った。その結果、半透明ゲート電極に印可した電場によってゲート下にあるエッジの位置を制御し、それを実空間、実時間で観察することに成功した。さらに、前年度に引き続き、量子ホールエッジの揺らぎ測定のためにマイクロ波用同軸ケーブルや低温アンプの選定およびテストを行った。測定対象となる超高純度ガリウムヒ素半導体量子井戸構造を用いたデバイスパターンの改良も継続して行った。 理論的側面としては、インフレーション宇宙を模して指数関数的膨張する量子ホール系エッジ電流系において、ホーキング輻射が観測できる可能性を指摘し、量子揺らぎが地平面を境に古典化する振る舞いを調べて、将来の実験結果と比較できる定式化を行った。 また数値計算を用いた理論的な研究として、量子ホール系の端状態に形成される電荷励起の空間構造を明らかにするため、静的ポテンシャルを系の端から加えたときの電荷密度分布と電荷相関関数をランダウ準位占有率が1/3と2/3の場合について計算した。得られた結果から、ランダウ準位占有率に応じた圧縮性液体と非圧縮性液体の境界構造の違いが明らかになった。 数理物理的な側面からの研究では、ヘテロティック弦理論で、新たなブレーンを発見した。これらは理論のトポロジーの構造と量子重力理論的な考察から存在が予想できる。それらをホログラフィックに記述する世界面の理論、正確にはブレーンをブラックホール的に実現した時の近ホライズン極限を記述する世界面の理論を厳密に構成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験的な進展としては、電気測定に用いる希釈冷凍機の不具合等があり、立ち上げがやや遅れている面もあるが、半透明ゲート電極に電圧を印可することによって、エッジ伝搬経路を自在に制御することが可能となり、ゲート下にあるエッジの経路を光学測定によって実時間実空間観察することに成功した。またバルク領域の励起状態に関する測定も始まったことから、おおむね順調に進展しているといえる。 理論的な研究として、量子ホール系エッジ電流のある領域を指数関数的に膨張させるときの量子もつれの振る舞いに関して、理論的に大枠として理解することに成功をし、これにより将来出てくる実験データの具体的な解析方法についても固めることができた点はおおむね順調に進展していると言える。 数理物理的な研究として、様々なブレーンは超弦理論の歴史の中でも極めて重要な役割を果たしてきたが、今回調べたブレーンのいくつかは過去に全く知られておらず、また過去に議論されていたものも性質がほとんどよくわかっていなかった。今回ブレーンの世界面の理論を得ることができたので、大きな発展であり、当初の計画より進展していると言える。 数値計算を用いた理論的研究として、非圧縮性の量子液体状態である占有率2/3の分数量子ホール状態において形成される端状態の詳細な構造が明らかになり、非圧縮性の領域の外側に局所占有率が1の密度一定の状態が等ポテンシャル線に沿うように湾曲するように形成されることで、系の端に圧縮性液体としての特徴が生み出されることが確認できたため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
量子宇宙を実現するために必須の希釈冷凍機環境の立ち上げを継続して行い、電気測定による本格的な実験を開始する予定である。そのためには~4ケルビンでの測定で問題となっていたクロストークを解決する必要があり、マイクロストリップラインを有するプリント基板の改良、低温アンプの最適化等を進めるとともに、ストロボ顕微分光測定からも、クロストークの原因を追究する。一方、電子ビーム描画装置を用いてポイントコンタクト電極を有する試料を作製し、クロストークが観測されないことが確認されている従来と異なる測定方法の確立も平行して進める予定である。前年度に導入した極低温下で動作するアンプを最適化し、量子エネルギーテレポーテーションの測定に向けた測定系の構築も進める。加えて、エッジ励起とバルク励起の詳細な測定を継続し、バルク励起を用いた宇宙論の検証測定にも着手する予定である。 理論研究としては、近い将来に出てくると期待される膨張エッジ電流の実験結果の解析がよりスムーズにできるように準備をしておく予定である。これまでの研究から非圧縮領域に形成される電荷励起は量子液体の並進対称性が破られることで生じる局所的結晶化を引き起こすことが分かったため、その外側に形成される圧縮性の液体領域に形成される電荷励起との質的な違いが、その動的な特徴に表れるはずである。今後はこの両者の違いを時間発展の計算によって明らかにする。 ブレーンの近ホライズン極限を記述する世界面の理論はわかったものの、まだまだブレーンの詳しい性質はわかっていない。例えばブレーン上に住んでいる理論の性質などを理解するのは重要な課題であるので、今後の詳しい研究で明らかにしていきたい。
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