Project Area | Biology of Non-domain Biopolymer |
Project/Area Number |
21H05282
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (III)
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
依田 隆夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (50367900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 載運 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任技師 (10554701)
譚 丞 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (20865886)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥78,910,000 (Direct Cost: ¥60,700,000、Indirect Cost: ¥18,210,000)
Fiscal Year 2024: ¥15,340,000 (Direct Cost: ¥11,800,000、Indirect Cost: ¥3,540,000)
Fiscal Year 2023: ¥15,340,000 (Direct Cost: ¥11,800,000、Indirect Cost: ¥3,540,000)
Fiscal Year 2022: ¥15,340,000 (Direct Cost: ¥11,800,000、Indirect Cost: ¥3,540,000)
Fiscal Year 2021: ¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
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Keywords | 分子動力学シミュレーション / 天然変性蛋白質 / 液液相分離 / Hero蛋白質 / 長鎖ノンコーディングRNA |
Outline of Research at the Start |
近年注目されている天然変性タンパク質や長鎖ノンコーディングRNAなどの非ドメイン型バイオポリマーは、特異的な配列や立体構造に依存することなくその生体機能を発揮している。本研究では、先端のシミュレーション技術と高速コンピュータを活用することにより、実験研究との相乗作用を産む分子動力学シミュレーションを行い、特徴的な分子機能を有する非ドメイン型バイオポリマーの振る舞いと動作原理を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
天然変性蛋白質(IDP)は非膜オルガネラの重要な構成成分であり、その異常な凝集が神経変性疾患に関わることでも知られている。IDPに含まれている天然変性領域(IDR)は、配列があまり保存されておらず、定まった天然立体構造を欠いている。IDPの機能を探る上でIDRが関与する分子間相互作用の役割を解明することは重要であり、そのための有用なツールとして分子動力学シミュレーションを活用できる。そこで我々は、細胞内の蛋白質を安定化し病的な凝集から守る機能を持つ、一連のHero蛋白質を主要なターゲットの一つと定め、全原子モデルと粗視化モデルを用いた IDP のシミュレーション研究を行なっている。 本研究では2023年度に (1) Hero蛋白質とその部分配列ペプチドの全原子MD(依田), (2) 大規模分子動力学計算のための技術開発(Jung), (3) TDP-43とHero11の凝縮相の全原子MD(Tan) を行った。 Hero蛋白質は他の蛋白質(クライアント)の病的な凝集を抑える機能を有するIDPであるが、(1)では3種類のHero蛋白質の部分配列ペプチド(4種類)のgREST MDで観察される二次構造形成の力場依存性を明らかにした。(3) では粗視化モデルに基づいて注意深く全原子モデルの初期構造を構築した。これを使って全原子MDを富岳で行ったところ、粗視化MDで得られた知見と一致する結果が得られた。(2)ではこれまでよりも大規模な粗視化MDを可能にする技術と同技術を搭載したGENESIS CGDYNの開発を行った。また、TDP-43 LCDを多数含む超大規模な系の粗視化MDにより液滴の融合を観察することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を達成するため、2023年度は以下の研究を行なった。 (1)Hero蛋白質とその部分配列ペプチドの全原子MD 依田は以前から注目していたHero9、Hero11に疎水的な残基の少ないHero7を加え、部分配列ペプチドのgREST MDを富岳で行った。Amber99SBws-STQ力場とCharmm 36m 力場による結果を比較したところ、いずれの力場でも実験結果に近いヘリックス含量を再現された。ただし、ヘリックスを比較的形成しやすいHero9(の部分配列ペプチド)でヘリックス含量が過小評価される傾向があるなど、実験からの乖離も見出された。 (2)大規模分子動力学計算のための技術開発 Jungは大規模な粗視化MDを高速で実行するため、動的負荷分散を伴うheterogeneous domain decomposition法を開発した。これをCGDYNに実装し、従来の手法や既存ソフトウェアとの性能比較を行ったところ、CGDYNの優位性が示された。CGDYNにより多数のIDP分子を含む系の粗視化MDを行ったところ、50個の小さい液滴が融合して直径約0.1μmの大きな液滴が形成された。その際にIDP分子の小さい液滴からの分離と大きい液滴への融合を伴うオストヴァルト成長が観察されたことが特筆される。 (3)TDP-43とHero11の凝縮相の全原子MD 以前行った粗視化MDでHero11がTDP-43の液滴の密度を低下させることが示唆されていた。そこでTanは、この粗視化モデルに基づいて全原子モデルを注意深く構築し、これを初期構造とする全原子MDを富岳で行った。Hero11を含まない系との比較によりHero11がTDP-43の凝縮相を緩めることを見出した。これは粗視化MDの結果と一致する。また、水やイオンの振る舞いについても調べた。
以上、本研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も2023年度までに行ってきた研究の一部を継続しつつ、非ドメイン型バイオポリマーのシミュレーション研究を進める。2023年度に着手した2分子系の陽溶媒全原子gREST MDによる研究を、相互作用の様態に力場依存が存在する可能性を留意して進める。また、2023年度に着手した大規模な系の全原子シミュレーション研究をさらに進め、Hero11と液滴中の蛋白質、水、イオンとの相互作用とHero11の作用機構との関係を分析する。最近開発されたGENESIS CGDYNを活用して、大規模な液滴の粗視化MDも引き続き実施する。また、残基レベルよりも細かい解像度をもつ粗視化モデルのための開発に着手する。
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