Project Area | Life-history reconstruction in marine animals: Transdisciplinary approach of geochemistry, physical oceanography, and ecology |
Project/Area Number |
22H05029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (II)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石村 豊穂 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80422012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 潤 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (10292004)
西田 梢 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (10708374)
則末 和宏 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50335220)
田副 博文 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 准教授 (60447381)
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Project Period (FY) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥39,260,000 (Direct Cost: ¥30,200,000、Indirect Cost: ¥9,060,000)
Fiscal Year 2024: ¥15,080,000 (Direct Cost: ¥11,600,000、Indirect Cost: ¥3,480,000)
Fiscal Year 2023: ¥15,210,000 (Direct Cost: ¥11,700,000、Indirect Cost: ¥3,510,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,970,000 (Direct Cost: ¥6,900,000、Indirect Cost: ¥2,070,000)
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Keywords | 回遊履歴 / 生物地球化学タグ / 安定同位体 / 重元素同位体 / 微量分析 / 酸素安定同位体 / ネオジム同位体 / 鉛同位体 / 炭素安定同位体 / 回遊生態 / ネオジム同位体比 / ラジウム / 耳石 |
Outline of Research at the Start |
「A03高度分析班」は本研究領域の各班に対し,回遊経路の時空分布(推定経路とその時間軸)を提示する役割を担う.具体的には,①魚類耳石の超高解像度酸素安定同位体比(d18O)分析による時系列経験水温および回遊経路の基盤情報の提示,②耳石中の炭素安定同位体比(d13C)を活用した生態食性指標の開発,そして③生体組織中の重元素(Nd, Pb等)同位体を活用した海域推定の高精度化によって,「複合生物地球化学タグ」の開発を遂行する.この新たな生態復元手法によって,海洋生物の回遊履歴解析の高精度化を実現する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究領域の問いは,海洋生物の回遊生態特性を解明し「いつ,どこにいて,何を食べていたのか」「環境が成長や生活史戦略にどのように影響を及ぼすか」を理解することにあり,その基盤となる回遊海域の推定技術(生物地球化学タグ)の高度化を実現することが本計画研究班の役割である。酸素同位体比(d18O)分析ではカバーできない東西方向の回遊履歴解明は,海域毎の重元素同位体分布の違いを活用することで解決される可能性がある。我々が独自に開発・発展させてきた魚類の高解像度回遊履歴解析を,多元素同位体分析と融合させ,世界で我々のみが実現できる「海洋回遊生物の生物地球化学タグ」の開発が本研究の主目的である。 本年度は昨年から引き続き,炭素酸素安定同位体技術開発を進めるとともに,海洋生物資料への実応用を進めた。酸素安定同位体は日本周辺の天然試料を用いた頭足類平衡石の成長段階毎の解析に基づく回遊履歴解析について基礎データの蓄積が大きく進んだ。炭素同位体比は骨組織中の構造炭酸塩を用いた生態解析への応用を試行し,生態活動の指標となることを見いだしつつある。ネオジム・ラジウム・鉛同位体については海域判別手法の技術確立を進めつつ,実際の各海域の同位体組成の分布を明らかにするとともに,海洋生物試料への応用に向けた実証展開を進めることができた。各構成員による研究計画はそれぞれ順調に遂行されており,高解像度回遊履歴解析に向けた成果が着実に蓄積されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【酸素同位体】頭足類の平衡石へ応用を進めて,日本周辺で得られた試料からは海域毎の同位体特性が異なることに加えて,函館の時系列サンプリングでは季節毎に異なる同位体特性の群れが移入していることを明らかにし,微量元素同位体解析を統合することで分布と移動の詳細の理解が進むことを見いだした。また,精密飼育実験による頭足類水温換算式の構築に関する必要から,飼育実験も試行した。 【炭素同位体】 マサバの骨格に含有する構造炭酸塩の炭素酸素同位体比分析により水温依存性を見出した。また部位によっては一定の炭素同位体比を示すことがわかり,同一部位で比較することで基礎代謝の復元に活用できると期待される。放射性炭素同位体・炭素安定同位体を組み合わせることで、耳石の炭素源推定の高精度化を実現した。水晶体の炭素源については,餌だけでなく海水の影響も含んでおり,先行研究と異なる結果が示された。 【ネオジム同位体比】西部北太平洋亜寒帯域における採水を実施した。ネオジム同位体比分析用に各層大量採水を行い、船上濃縮操作後に持ち帰った。新規指標と期待されるセリウム同位体について分析を進めている。さらに長崎・熊本・鹿児島においてタカラガイを採取しつつ,打ち上げ個体は表面汚染の影響も懸念されるため連続抽出法による汚染除去を検討した。ネオジムについては既存の手法を応用することで,酸化鉄沈着の影響であるマンガンを低減できることが明らかにした。 【鉛同位体】 日本海や東シナ海北東部など,日本周辺海域の溶存態鉛同位体組成の分布を明らかにし,海産生物の鉛同位体組成に基づく魚類等の回遊履歴の推定のための基盤情報を取得した。また二枚貝中鉛同位体比の分析手法手順をほぼ確立しムラサキイガイの基礎検討を進め汚染フリー洗浄法を確立し,さらにアサリにも適用して日本国内の産地・環境地質学的な条件に応じた同位体比変動データをほぼ取得することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
下記の生物地球化学タグから得られる断片的情報を融合し,回遊履歴解析の高精度化を実現する.前年度から収集中のサンプルの解析と基礎実験から得られた知見の生体試料への実応用を継続する。 ○δ18O:δ18Oのサンプリングと水温履歴解析を継続し,産卵域・回遊域を推定するとともに,下記の多元素同位体指標とδ18O履歴との比較を行うことで,太平洋と日本海の往来履歴を検証する.また,近年報告が相次ぐ魚類の危機的な生息環境を明らかにするために、最近頻発するマイワシ大量死のサンプルを収集し,水温履歴に残された環境履歴の抽出も試行する。 ○δ13C:炭素同位体比を活用した基礎代謝の復元について、魚類飼育個体の分析結果を基に,計算に用いる同位体分別係数の検証を行うことで代謝の計算式の精緻化を行う。また,骨に含有する構造炭酸塩については複数種で炭素・酸素安定同位体比の分析結果を比較し,温度依存性や代謝指標としての有効性を検証する。 ○ネオジム同位体比: 1 ナノグラム以下の微量試料のネオジム同位体比分析に対応するため、化学分離法の高度化と表面電離型質量分析計によるイオン化効率の向上を実施する。具体的には1ナノグラムのネオジムから内部精度50 ppmでの分析を目指す。 ○金属元素同位体複合解析(鉛):ムラサキイガイについては分析手法確立にとどまっており,日本周辺域採取済み試料分析を確実に進める。貝殻分析手法の改良に成功しアサリの貝殻中同位体比分析を進めほぼ完遂済みのため,成果としてとりまとめる。日本海海水中同位体比データも論文としてまとめる。頭足類の生体試料分析・同位体比計測に着手し,同試料中鉛同位体分析をさらに進める。
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