両性花における動物を利用した他殖促進機構の構築原理
Project Area | Genomic dynamics underlying the plastic hermaphroditism in plants: the basis of exploratory reproductive adaptations. |
Project/Area Number |
22H05176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (III)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 寿朗 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90517096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北口 哲也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60432374)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥103,480,000 (Direct Cost: ¥79,600,000、Indirect Cost: ¥23,880,000)
Fiscal Year 2024: ¥19,890,000 (Direct Cost: ¥15,300,000、Indirect Cost: ¥4,590,000)
Fiscal Year 2023: ¥21,190,000 (Direct Cost: ¥16,300,000、Indirect Cost: ¥4,890,000)
Fiscal Year 2022: ¥21,060,000 (Direct Cost: ¥16,200,000、Indirect Cost: ¥4,860,000)
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Keywords | 転写制御モジュール / 花発生 / cis-trans制御 / エピゲノム / 定量解析 |
Outline of Research at the Start |
蜜腺は、多様な被子植物の種分化を生み出した原動力の1つであるが、本来の正しい位置に正しいタイミングで成熟した蜜腺をつくるための分子メカニズムは不明である。本研究は、1) 自殖する和合種であるシロイヌナズナでの蜜腺形成の鍵遺伝子のネットワーク機構の解析、2) シロイヌナズナ近縁種で他殖のみを行うセイヨウミヤマハタザオと、生育環境に応じて他殖を促進する開放花及び自殖のみを行う閉鎖花を使い分けるコカイタネツケバナの2種での蜜腺モジュールの比較解析を行う。これらの解析により、生殖様式に連動した定量的な蜜腺サイズと蜜量を決める分子機構を解明し、その可塑性を支える駆動メカニズムとゲノム動態を理解する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、シロイヌナズナにおける蜜腺形成の遺伝子ネットワーク機構の解明を進めた。蜜腺形成の鍵遺伝子CRABS CLAW (CRC)はYABBY型の転写因子をコードしている。まず、蜜腺で正常に機能するCRC-GFPタンパク質を発現する形質転換植物を作成して、ChIP-seqを行い、1,881個の直接標的候補遺伝子を同定した。さらに、野生型とcrc変異体の蜜腺のサンプルを用いて、花発生ステージごとにRNA-seqを行い、ChIP-seqで同定した遺伝子とRNA-seqで発現が変動した遺伝子の重複を調べた結果、CRCが直接発現を制御する遺伝子には、花の発達や生合成過程の制御などのGO termが多いことがわかった。CRC遺伝子の上流の転写促進因子をコードするAGAMOUS、SHATTERPROOF 1、SHATTERPROOF 2遺伝子がCRCのターゲット遺伝子として同定された。このことは、CRCが上流の転写因子の発現を正のフィードバックにより制御しており、これがCRC遺伝子の蜜腺の形成初期から蜜を分泌する時期まで継続的な発現の維持に作用していることが解明された。さらに、蜜腺形成過程に継続的に制御されている遺伝子として、新規にMACCHI-BOU 4 (MAB4) 遺伝子を同定した。mab4変異体の蜜腺サイズを定量計測することにより、mab4変異体の蜜腺は野生型の蜜腺よりも小さいことがわかった。さらにMAB4タンパク質は、蜜腺の細胞の細胞膜に偏りをもって局在しており、メリステムにおいてこれまでに報告されている機能と同様に、蜜腺においてもオーキシンの輸送に関わるPIN1タンパク質の細胞内局在の制御にかかわることが示唆された。このことから、MAB4は蜜腺の内部へのオーキシン輸送を促進することで、蜜腺の大きさを正に制御するという蜜腺形成の新規モデルを提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナにおける蜜腺形成の主要遺伝子カスケードの解明に成功した。さらに令和5年度に解析を進める予定であったレポーター遺伝子の解析にもすでに着手している。また、同様にコカイタネツケバナの種子を入手して、植物体の栽培も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は令和4年度までに同定し解析を進めてきたシロイヌナズナにおける蜜腺形成の鍵因子であるCRCターゲット解析について論文化するための追加実験を行う。特にCRCターゲットのうち、オーキシンの輸送体であるPIN-FORMED (PIN) タンパク質の局在制御を介して、オーキシンの輸送を制御すると報告されているMACCHI-BOU 4 (MAB4) 遺伝子MACCHIBOU4(MAB4)の機能解析を推進する。GFPおよびVenusレポーターを用いてMAB4とPIN1タンパク質の細胞内局在を観察し、さらにオーキシンシグナルを可視化することができるDR5レポーターを用いて野生型とmab4変異体の蜜腺でのオーキシンの蓄積を蜜腺の発生時期に沿って解析する。時空間相関解析から、MAB4の蜜腺形成における機能モデルを提唱して論文としてまとめる。さらにMAB4遺伝子の予想されるコア配列に結合する因子のデータベース解析とその遺伝学的解析により、共通のcis配列に作用するCRCを含む蜜腺誘導のtrans複合体へと解析をすすめる。 CRCターゲット遺伝子群のエピゲノム解析として、ChIL法という少数細胞からシングルセルレベルにて免疫沈降を可能とする手法を適用する。また、それぞれのヒストン修飾因子の修飾酵素の突然変異体やタグラインを活用することで、エピゲノム状態が蜜腺形成遺伝子の時空間に特異的な発現制御に及ぼす影響及び、酵素群の機能を解明する。上記の統合的解析により、シロイヌナズナにおける蜜腺形成遺伝子ネットワークの時空間特異性を解明する。 また、シロイヌナズナ近縁種での解析として、環境に応じて開放花と閉鎖花を作り分けるコカイタネツケバナを栽培し、それぞれの花における蜜腺の形態を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡にて観察し、今後の分子生物学的な解析の材料として確立する。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)
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[Book] 化学と生物2023
Author(s)
宮嶋 渚,本郷達也,伊藤寿朗,山口暢俊
Total Pages
49
Publisher
日本農芸化学会
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