魚類の社会的知性の基盤と神経基盤の解明:生態との関連性から探る魚類の高次認知
Project Area | Cognitive Evolutionary Ecology: A new approach for the study of the origin of animal intelligence and its relation to complex society |
Project/Area Number |
23H03871
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (IV)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 宏司 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70723211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 茂 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (30051907)
川坂 健人 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 特任助教 (60908416)
山本 直之 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (80256974)
萩尾 華子 名古屋大学, 高等研究院(農), 特任助教 (80848309)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥25,090,000 (Direct Cost: ¥19,300,000、Indirect Cost: ¥5,790,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,020,000 (Direct Cost: ¥5,400,000、Indirect Cost: ¥1,620,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
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Keywords | 認知 / 魚類 / 神経 / 学習 / 心理 |
Outline of Research at the Start |
魚類において、様々な高次認知能力が発見されているが、その報告例は未だに少なく、神経基盤も解明されていない。本研究班では、これまでに報告のない魚類の高次認知機構を探索し、さらに神経基盤を解明することを目的とする。特に、捕食・被食関係に注目した、推移的推論や視線誘導・共同注意や選択課題の行動からみるメタ認知について、魚類の生態を踏まえた手法によって高次認知能力の新規発見を目指す。また、魚類の顔認知について、行動学的な手法と神経解剖学的な試みを融合させ、その神経基盤を解明する。哺乳類と魚類の認知機構の相同性を検証することで、動物の認知能力の起源において重要な知見となることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、魚類において様々な高次認知能力が発見されているが、その報告例は陸上脊椎動物と乏しく、さらに認知機構についてはほとんど解明されていない。本研究班では、魚類の未解明な高次認知能力を探索し、さらに神経基盤を解明することで、陸上動物との認知の相似・相同性を問い、脊椎動物における高次認知の起源に迫ることを目的としている。初年度である2023年度では、高次認知能力の検討として、推移的推論、メタ認知、顔認知に注目し、これらの能力を検証することを進めてきた。推移的推論では、捕食性魚類であるオスカーを用いて隠れた餌に対する執着行動から餌に対する推察を検討した。見えなくなった餌に対する執着行動は観察されたが、その傾向は弱く、行動発現においては環境操作が求められることが示唆された。メタ認知の検証では、キンギョを対象に水槽内に投与した薬物の弁別に注目して自身の中枢状態の認知の是非から検討を進めた。ここまでに実験手法を定める予備実験を重ねることで、概ねの実験基盤を確立させるところに至っている。顔認知については、プルチャーの異人種効果について検討を行い、成魚では異なる地域の顔識別が困難であることが示された一方で、幼魚ではその効果を明らかにすることはできなかった。神経基盤の解明では、同様にプルチャーを用いて、まず視覚回路の解析を行ない、網膜から大脳への視覚上行路を明らかにした。顔ニューロンの検討では、行動実験によって見知った個体の認知を検証する実験基盤の構築を行なった。各研究について、ここまでで得られた成果から、次年度以降に進める研究方針の目処をたてることができたため、引き続いてこれらの研究を推し進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次認知能力の検討では、推移的推論、メタ認知、顔認知、視線注視に注目し、これらの能力を検証することを進めてきた。初年度である2023年度では、実験対象種の選定、手法の検討および予備的な調査を実施し、今後の実験方針や実験基盤の構築を概ね完成させることができた。神経基盤の解明では、顔認知における神経回路基盤を探ることで、動物に共通する顔神経の特定を進めてきた。2023年度では、対象種とするプルチャーの視覚回路の特定および顔認知機構を探るための行動実験装置の作成を行ない、顔認知機構の探索を進める基礎となる実験手法の構築を進めることができた。研究の推進においては、代表者や分担者の所属機関の変更などがあり、進捗が遮られることがあったが、当初計画するテーマについていずれも予備的な実験を進めることができたことから、概ね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目にあたる2024年度では、前年度に得られた情報を基に、引き続いて魚類の高次認知能力の検討および神経基盤の検討を進めていく。高次認知の検討では、餌に対する推移的推論、メタ認知、顔認知および視線注視に関する研究を進めていく。 餌に対する推移的推論では、より単純な餌の落下地点の選択行動から、隠れた餌に対する認知を探り、執着行動の基盤となる餌の存在の理解を明らかにし、餌の数を操作した実験から数的な推察能力を検証する。メタ認知では、引き続いて薬物弁別に注目し、前年の予備実験で構築された実験基盤を基に自身の中枢状態の認知の是非を検証する。顔認知では、魚類における異人種効果の検証について、生後の環境操作を加えた実験を実施し、環境要因がもたらす効果について検討する。視線注視の検討では、餌発見の実験を変更し、他個体の視線に対しての防衛行動から検討を進め、さらに野外でのフィールド実験に加えて水槽での実験を実施する。高次認知神経基盤については、顔認知の神経基盤の解明を目指す上で重要となる行動実験基盤を完成させる。画像だけでなく、映像や生体をモデルとした実験から、他者への顔見知り効果を検出できる実験系を確立させた上で、他者提示に対する神経回路の解析を行う。また、上記に挙げている認知機構の他に、魚類の高次認知や心理機構に関するアイデアが生まれた際は、柔軟に枠組みを広げて検証を進める。加えて、領域全体のつながりを強化することを目指して、魚類以外の水圏動物についても認知機構の探索を行う。具体的には、頭足類(イカ)や甲殻類(エビ)での推移的推察やメタ認知についての実験を計画している。これらの研究は、主に各研究分担者が所属する機関で進めていく。計画班の研究者間では、研究の方針や進捗について領域SNSやweb会議を適宜行い、計画研究の推進を図る。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)