Research on Prehistoric Population Dynamics in the Japanese Archipelago
Project Area | Integrative bioarchaeological studies on human prehistory in the Japanese archipelago |
Project/Area Number |
23H04844
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (I)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 大 立命館大学, 研究部・衣笠リサーチオフィス, 職員 (50296787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究院, 教授 (00347254)
山口 雄治 岡山大学, 文明動態学研究所, 助教 (00632796)
河合 洋介 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 副プロジェクト長 (30435515)
NOXON Corey・Tyler 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (70906924)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥34,190,000 (Direct Cost: ¥26,300,000、Indirect Cost: ¥7,890,000)
Fiscal Year 2024: ¥8,190,000 (Direct Cost: ¥6,300,000、Indirect Cost: ¥1,890,000)
Fiscal Year 2023: ¥9,750,000 (Direct Cost: ¥7,500,000、Indirect Cost: ¥2,250,000)
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Keywords | 先史時代 / 人口動態 / ゲノム分析 / 統計解析 / 自然科学分析 / ゲノム解析 / 同位体分析 / 放射性炭素年代 |
Outline of Research at the Start |
この研究では、縄文時代を中心とする先史時代を対象に、遺跡から発見された各種資料(建物跡、人骨、動植物の遺存体)について年代測定、同位体分析、ゲノム分析、統計解析など多彩なデータ分析を行う。こうした多角的な分析からより高い精度で信頼性のある人口動態の推定が可能になる。それとともに、考古学的手法に自然科学的手法を織り交ぜた総合的学問領域である「統合生物考古学」の確立に貢献できる研究をめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
東日本の先史時代については、住居跡数と遺跡数を併用した人口推定手法を開発し、縄文時代を対象とした人口動態の推定を実施した。特性の異なるデータを組み合わせてバイアスを軽減し、妥当性の高い推定をめざした。東北北部の縄文早期~晩期(10500~2500年前)における数回の大きな人口増減を明らかにできた。また、北海道北部・東部の遺跡から出土したキタオットセイとマダラの窒素・炭素・酸素同位体分析とこれまでの人口動態推定をもとに、海洋生産性と人口動態の関係性を検討した。擦文文化終末期以降の人口減少が海洋生産性の低下と関係している可能性がある一方、海洋生産性が低いとみられるオホーツク文化期には人口増がみられ、両者の関係が複雑であることが判明した。加えて、異なる住居形態に必要な材料とエネルギーの定量化分析を進めた。住居タイプと移動性の関係は人口推定の補正項として活用できる。 西日本の先史時代については、縄文時代の貯蔵穴群について形成過程の分析を進めた。住居跡の発見例が少ないため、貯蔵穴の数と容量も人口規模推定の根拠として重要である。岡山県の遺跡で発見された貯蔵穴群の放射性炭素年代測定を実施し、出土土器から想定されていたよりも長期にわたる使用の実態を明らかにした。これは今後の人口推定に役立つデータである。 ゲノム解析による先史人口の推定ではゲノム情報のデータベース構築を進めた。現代人ゲノムデータは、ナショナルセンターバイオバンクネットワーク、沖縄バイオインフォメーションバンクなどから全ゲノムシークエンス解析(WGS解析)で得られたゲノムデータを収集しデータ統合を行った。古代人ゲノムデータは、ヤポネシアゲノム研究と公的データベースから東アジアを主としたデータを取得した。現代人のハプロタイプ情報による推測(imputation)を行い、全ゲノム解析に匹敵する解析データセットを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、先史時代の人口動態の推定に用いる各種のデータ構築と分析手法の改良を目標として研究を進めた。データの取得については、動物遺存体の同位体分析、現代人および古代人のゲノムデータ、住居形態ごとの必要な資源とエネルギーの見積もりについてはほぼ予定通り進展している。西日本の遺跡や土器の年代測定については想定以上に分析サンプルの確保が難しい状況であった。しかしこれについては今後本格的に進める地形環境データの解析などで補完していくことも可能と考えられるため、現状では深刻な遅れとは考えていない。また、東日本の遺跡と住居跡のデータベース構築については本年度に固有の事情により一部について収集に遅れが生じているものの、次年度に回復可能と判断している。 分析手法の改良については着実な進展があり、今後データの蓄積が進めば良好な分析結果を得ることができると期待される。考古資料にもとづく人口動態推定については、住居跡数と遺跡数を併用し統計的手法を用いて100年幅ごとの年間平均人口数を推定する方法を開発したことは大きな成果である。また、動物遺存体の同位体分析と人口推定をセットにした分析は、環境と人口との関係性を解明するとともに人口推定の妥当性を評価することにも役立つ。これにゲノムデータにもとづく人口推定を加えれば多角的に先史時代の人口動態を推定する手法の確立に近づく。分析手法の改良については、こうした先史時代人口の動態復元に関わる総合的な分析手法のイメージを掴むことができた点で着実に成果を上げている考える。 以上を総合し、現在までの進捗状況についてはおおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
地域やデータ種別ごとの人口動態推定については、引き続きデータの構築と分析手法の改良を進める。これにより分析対象地域を拡大しながら着実な分析結果を生みだしていくことが本研究課題を推進する原動力となる。 それとともに、今後は本研究班内および他の計画研究班とのコラボレーションを積極的に進めていく予定である。まず、研究班内では同じ地方・地域を対象に、考古資料(遺跡、住居跡)、放射性炭素年代の測定値、ゲノムデータの異なるデータと分析手法で人口動態を行い、それぞれの分析結果を比較検討する研究を推進する。本研究課題が主な対象とする縄文~古墳時代には戸籍など直接人数を数えることができる史料はほとんどない。したがって、人口と比例関係にある何らかのデータにもとづく間接的手法で人口動態を推定することになる。この場合、各種のデータにはそれぞれ長所と短所があり、複数種類のデータや分析手法による複数の推定結果を比較することで妥当性の高い推定範囲を見極めていく必要がある。また、この比較分析により各分析手法の見直すべき点、強みと弱みがより明確になり、個々の人口推定研究のさらなる進展が期待できる。 加えて、人口推定を扱うあるいは人口情報が研究の進展に寄与できる他の計画研究班とのコラボレーションも進めていく予定である。こうした広範な研究協同は、本学術変革領域研究がめざす日本列島域における先史人類史の総合的叙述と統合生物考古学的研究の確立に必要なものである。
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Report
(1 results)
Research Products
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