Project Area | Unveiling, Design, and Development of Asymmetric Quantum Matters |
Project/Area Number |
23H04867
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (II)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
田端 千紘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (60783496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩佐 和晃 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 教授 (00275009)
松村 武 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 教授 (00312546)
網塚 浩 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40212576)
関山 明 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (40294160)
中尾 裕則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (70321536)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥195,910,000 (Direct Cost: ¥150,700,000、Indirect Cost: ¥45,210,000)
Fiscal Year 2024: ¥37,830,000 (Direct Cost: ¥29,100,000、Indirect Cost: ¥8,730,000)
Fiscal Year 2023: ¥50,700,000 (Direct Cost: ¥39,000,000、Indirect Cost: ¥11,700,000)
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Keywords | 中性子散乱 / 放射光 / 多極子 / アシンメトリ量子 / 中性子 / ミュオン / スケールシームレス |
Outline of Research at the Start |
本計画研究は、多種多様な物性・機能の源たる電子自由度を、時空対称性に基づいてスケールシームレスに包括した複合電子自由度である「アシンメトリ量子」を、電子構造対称性の微視的観測に有効な量子ビームを駆使して可視化することを目指す研究である。X線・中性子・ミュオンビームが有する偏極 (偏光)性・エネルギー可変性を相補的に活用し、単一原子スケールの電子状態からメゾスケールの秩序構造に及ぶ幅広い空間スケールにおいて、電子秩序構造を微視的な観点から明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本計画研究は、多種多様な物性・機能の源たる電子自由度を、時空対称性に基づいてスケールシームレスに包括した複合電子自由度である「アシンメトリ量子」を、電子構造対称性の微視的観測に有効な量子ビームを駆使して可視化することを目指す研究である。X線・中性子・ミュオンビームが有する偏極(偏光)性・エネルギー可変性を相補的に活用し、単一原子スケールの電子状態からメゾスケールの秩序構造に及ぶ幅広い空間スケールにおいて、電子秩序構造を微視的な観点から明らかにする。この目標を達成するために、アシンメトリ量子物質として期待される複数の化合物について中性子・放射光を用いた量子ビーム散乱実験を実施した。具体的には、(A)X線・中性子回折による結晶対称性およびクラスター構造の解析、(B)共鳴X線散乱による高次多極子・奇パリティ多極子の観測、(C)X線光電子分光による電子状態・電子構造解析を目的とした各種実験を実施した。並行して、従来の手法では観測不可能なアシンメトリックな電子秩序状態を観測するための手法および装置の高度化を実施した。これらの活動の結果、複数の化合物において、その物質が持つ各種対称性およびその破れと強く結びついた電子秩序相の微視的描像を見出すことに成功した。今後、これらの観測研究をさらに深化させるとともに、領域内のマクロ物性測定・理論解析・物質開発を担う他計画研究に得られた微視的情報を供し、アシンメトリ量子の多角的理解へと繋げる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子散乱・共鳴X線散乱の相補利用により、アシンメトリ量子物質として捉えられる各種化合物について結晶・磁気構造を明らかにした。ハニカム構造を有する新規ウラン化合物の磁気構造を明らかにしたほか、Remeika相化合物であるNd3Rh4Sn13のカイラル対称結晶構造への相転移と磁気構造の詳細を、Y3Rh4Ge13のカイラル対称結晶相における超伝導を明らかにした。局所的空間反転対称性の破れた反強磁性体UPt2Si2において、磁気秩序と共存する電荷密度波による5f状態の空間変調を見いだし、電子軌道間の選択的な結合が5f状態の対称性を自発的に破り、局所的なパリティ混成が発現していることを示唆した。 反転心を持たない正方晶磁性体EuNiGe3について、磁場中の中間相が磁気スキルミオンの歪んだ三角格子秩序相であることを見いだした。円偏光を利用した共鳴X線回折によって、磁気スキルミオンを形成するらせん磁性ヘリシティの磁場中の振る舞いを明らかにし、スキルミオン格子形成において重要な役割を担っていることを指摘した。 CeNi2Ge2の内殻吸収および内殻光電子線二色性から占有Ce 4f軌道がGeサイトを向いたΓ7対称性を有し、重い電子状態にはCe 4f-Ge 4p混成が重要な役割を果たし、またLaNi2Ge2とCeNi2Ge2のARPESおよびバンド計算の比較からフェルミ準位近傍で混成によって変化するバンドの軌道成分がGe p軌道に由来していることを解明した。 多極子ドメインやメゾスケール多極子の観測のため、共鳴軟X線散乱装置に集光光学系を組み合わせた実験装置の建設・立ち上げを進めた。10μm以下のビームサイズが簡便に利用できるようになり、試料の走査によるドメイン観測が室温でできつつある。また、中性子散乱実験における横磁場・低温環境実現のため、横磁場マグネット専用の無冷媒冷凍機を製作・導入した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に引き続き、量子ビームによるアシンメトリ量子の観測実験を推進する。共鳴X線散乱の遷移過程をより詳細に調べることでパリティ混成状態すなわちアシンメトリ量子自由度を直接観測する実験や、光電子分光および電子分光二色性による4f軌道の混成の観測実験、中性子非弾性散乱によるアシンメトリ量子のダイナミクスの観測実験等を進めるほか、類似物性を示す同型物質についても研究を拡張する。 得られたアシンメトリ量子物質の可視化データをマクロ物性測定・理論解析・物質開発を担う領域内の他計画研究に提供し、メカニズム解明・新奇なアシンメトリ量子物質の創出へと繋げる。ここで得られるフィードバックに加え、2024年度から開始となる公募研究との連携を通して、候補物質における可視化を手法横断的に実施する。 アシンメトリ量子の観測対象を広げることを目指し、2023年度で導入した各装置の高度化・立ち上げを推進する。中性子散乱における横磁場・低温環境の立ち上げを行い、偏極中性子と組み合わせることで、従来の縦磁場配置の散乱装置では困難であった磁場誘起秩序およびダイナミクスを観測する。また、共鳴軟X線散乱における集光サイズの向上、低温実験用の装置開発を進める。これによりカイラルドメイン等の測定が可能になるなど、測定手法のスケールシームレス性の向上が期待できる。
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