Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
昨年度に引き続き、物理限界(回折限界)を凌駕する分解能を有する新規の光学顕微鏡の開発を行った。回折限界を突破するための手法として、これまで我々が手掛けてきた2波長2重共鳴分光法を応用することを考えた。気相分子では、第1のレーザー光(ポンプ光)により分子を第1励起状態に励起した後、さらに第2のレーザー光(イレース光)を入射し高励起状態への遷移を起こすと、第1励起状態からの蛍光が抑制されることはよく知られている。通常のレーザー顕微鏡ではポンプ光を集光した回折限界からの蛍光を観測する。この蛍光領域から僅かにずらしてイレース光を入射すると蛍光抑制過程によって蛍光領域が削り取られる。従って2色のレーザー光を用いることで回折限界以下の像、すなわち超解像が実現できる。さらに、実際の測定の際にはイレース光を中空のドーナツ形状をした1次ベッセルビームに変換し、これをポンプ光と同軸でサンプルに照射することにより、ドーナツの穴の部分からの蛍光を観測することにより、超解像顕微鏡の構築をはかった。サンプルとしてはRhodamine 6Gをドープした蛍光ビーズを用いた。1μm径のビーズを用いた実験において、ポンプ光のみを照射した時には回折限界である2.5μmの大きさで蛍光像が観測されたが、ここで2色のレーザーを入射すると、ビーズそのものの大きさである1μmの蛍光像が得られた。これは回折限界を2.5倍突破する結果である。さらに、隣接する2個のビーズについても蛍光像の分離が顕著になっており、2点分解能の向上も認められた。また、175nm径のビーズを用い同様に蛍光像の収縮が観測され、ナノメートル領域での超解像の実現にも成功した。また、本研究の成果として、論文6報を発表し、特許8通出願した。
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