Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
現在、ハドロンの振る舞いはQCDで記述できると信じられている。しかし、このQCDによるハドロンの記述は依然不十分であり、QCDラグランジアンだけではハドロンの示すさまざまな規則性を説明できない。その多くの未解決の問題はQCDの非摂動論的な領域にあり、理論的取り扱いは容易でなく、現在精力的に研究が行われている。この未解決の問題のひとつに、核子のスピン構造の謎があるわけである。今年度は主に、このQCDの非摂動的領域の振る舞いを明らかにするもうひとつの有力な実験として、高エネルギー加速器研究機構における、ベクター中間子の崩壊を用いた中間子質量に対する核物質効果の測定実験に従事した。QCDに基づく計算により、ベクター中間子は通常の原子核密度中でもその質量を部分的に失う可能性が指摘されている。そこで、ベクター中間子を核物質中で生成し、その崩壊生成物より不変質量分布を構成して、ベクター中間子の核物質中での質量変化を測定することを目的として実験を行った。前年度までに収集した大量のデータを解析し、今までに発表された結果の約100倍の統計量を達成した。解析の結果、電子陽電子対の不変質量分布において、質量が0.55-0.75GeV/c^2の領域に、既知のhadronic sourceでは説明できないエクセスを見出した。また、ρ中間子の生成量が従来のp+p実験に比べて減少しているという結果も得た。このρ中間子の減少は、エクセスがρ中間子の質量スペクトラムの核物質中での変化によるものであることを強く示唆している。この結果は2002年秋の日本物理学会秋季大会、国際会議PANIC02、2003春の第58回日本物理学会年次大会において発表された。
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