Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
ウェルシュ菌の毒素産生調節ネットワークの全貌を明らかにするため、昨年決定したウェルシュ菌strain 13の全ゲノムシークエンスをもとにDNAチップを作製した。チップに貼り付けるDNAとしては染色体上の全ORF(2660個)、500b以上のintergenic region(144領域)、さらにプラスミド(pCP13)上の全ORF(63個)の合計2867領域を選択した。これらの領域をそれぞれの特異的プライマーを用いて増幅した後、TOPOTAクローニングキットを用いてPCR断片を一度大腸菌にクローニングし、再度その大腸菌からPCRを行い、得られたDNAをスライドガラス上にスポットした。このDNAチップを用いて、細胞間情報伝達物質の産生に関わるluxS遺伝子変異株の発現プロファイルを解析した。その結果、luxSにより正の影響を受け、野生株と変異株で3倍以上の差が見られる遺伝子は138、負の影響を受け3倍以上の差が見られる遺伝子は89存在し、全遺伝子の約8%が影響を受けることが明らかとなり、ウェルシュ菌にはluxS遺伝子の関与するグローバルな遺伝子調節機構が存在することが示唆された。また、ウェルシュ菌のゲノム上に存在する28の2成分制御システムの破壊株をそれぞれ作製し、DNAチップを用いて各々の制御システムにより影響を受ける遺伝子群の検索を開始した。本年度は毒素産生調節に関与することがすでに報告されているVirR/VirSシステムに焦点をあてて解析した。その結果、VirR/VirSによって正の影響を受ける124遺伝子、負の影響を受ける55遺伝子を同定した。これらの遺伝子はさらに、VirR/VirSシステムが直接調節する遺伝子群、VirR/VirSシステムの下に存在する二次的調節因子VR-RNAの影響を受ける遺伝子群、さらに他の二次的調節因子を介して制御する遺伝子群に分類することができた。今後、他の2成分制御系遺伝子の変異株を用いた発現プロファイル解析を行い、ウェルシュ菌における毒素産生調節ネットワークの詳細を解明して行く予定である。
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