Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
Polyanilineは現在多くの応用が試みられており、その例としてEL素子、二次電池、防食、センサなどがあり、これらのことを実現するためには物性を調べる必要があり、電子構造に関する知見が不可欠である。そこで、本研究では実験及び計算化学的手法の2つの方法を用いた。実験では、(1)赤外吸光分析により各polyanilineの構造の違いを調べ、(2)紫外可視吸光分析により遷移状態を決定した。また計算からは(3)調和振動解析及び励起計算を行い実験値との比較を行い計算モデルの妥当性を検討することを目的とした。IRの結果からLEB、EB、PBと酸化が進むにつれキノイド環の伸縮振動のピークが増大する一方ベンゼン環及びC-Hの伸縮振動が減少したごとからベンゼノイド型からキノイド型へと構造が遷移していくことが確認された。また振動解析の結果においては実験値とピークの強度比及び各振動の順序が一致していることから概ね良好な記述が出来ることが確認された。UV測定は、誘電率の異なる二つの溶媒を用いた場合、高い方の誘電率の溶媒に対してはブルーシフトを示し、もう一方はレッドシフトを示した。このことから右側のピークはn-π*遷移であり左側のピークはπ-π*遷移であることが確認された。一方励起計算の結果からは最低励起一重項はHOMOからLUMOへの遷移が77%、HOMO-3からLUMOへの遷移が23%であることからHOMOからLUMOへの遷移が支配的であり、これは実験結果のn-π*遷移であることと一致する。またその励起エネルギーは実験結果では597nmであり励起計算では574nmであることからpolyaniline tetramaer modelが実験結果を精度よく再現しうることが確認された。