Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究ではニワトリリゾチーム(HEL)とHELに対するモノクローナル抗体HyHEL-10を例に、抗原抗体相互作用における特異性、親和性を決定する因子を明らかにすることを目的とする。1、抗原抗体相互作用における抗体重鎖(H鎖)Tyr残基の役割の解明HyHEL-10ではH鎖の抗原結合部位に4つのTyr残基(33位、50位、53位、58位)が存在し、相互作用に大きく寄与していると考えられる。ここではTyr33とTyr53に関する変異体(HY33AY53A、HY53A)についてHELとの複合体構造の精密化を行い、HY53Aについては相互作用の熱力学的解析を行った。この結果Tyr33の芳香環は相互作用の際にHELの誘導適合、CDR-H2ループの安定化など、相互作用に重要な役割を果たしていることが明らかになった。またTyr53は多くのファンデルワースル相互作用によりエンタルピーを獲得するが、同時に周辺構造を固くすることでエントロピー的に損していることが分かった。2、抗原抗体相互作用における界面の水分子を介した水素結合の役割の解明HyHEL10-HEL相互作用においては、軽鎖(L鎖)とHELの界面に多くの水分子が存在する。ここでは水分子を介した水素結合に関与するL鎖のTyr50、Ser91、Ser93について変異体(LY50F、LS91A、LS93A)を作製し、熱力学的解析およびHELとの複合体の結晶構造解析を行った。これらの変異体では獲得エンタルピーの大きな減少が見られたが、好ましいエントロピー変化により相殺されていた。またHELとの複合体構造は水分子の配置も含めて野生型とほぼ同じ構造であった。このことから界面の水分子を介した水素結合はエンタルピー的に寄与しているが、同時にエントロピー損失を伴う相互作用であることが明らかになった。これらの水素結合は複合体構造を局所的に固くしていると考えられる。
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