Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
内分泌細胞はホルモンを分泌する以外に、神経の化学伝達と似た細胞間の情報伝達を行っている。すなわち、内分泌細胞はマイクロベジクルの中に神経伝達物質を濃縮し開口放出し、隣接する細胞に働きそれらの内分泌機能を制御する。これはこれまでに知られていない新しいタイプの内分泌制御機構である。申請者の属する研究室では、時間情報ホルモンであるメラトニンの内分泌器官である松果体を用い、この新しい内分泌制御機構を研究してきた。そして、松果体細胞が興奮性アミノ酸であるグルタミン酸を用いてメラトニンの生合成を負に制御していることを示した。マイクロベジクルはこの新しい内分泌制御機構の中心的な役割を果たしているオルガネラである。しかしながら、生細胞におけるマイクロベジクルの動態ははとんど明らかにされていなかった。私は本研究により以下の1-3の成果を得、マイクロベジクルの構造と機能について明らかにすることができた。(1)マイクロベジクルの構成タンパクを明らかにした。グルタミン酸作動性神経のシナプス小胞と同等であることがわかった。特筆すべきは、この研究によりこれまで未知であったvesicular glutamate transporter 2を同定したことである。松果体のマイクロベジクルにはこの他vesicular glutamate transporter1も発現していた。多数の論文を発表した。(2)マイクロベジクルの生合成経路、刺激後のマイクロベジクルの開口放出のタイムコースや放出後のリサイクル過程を、松果体初代培養系を材料に、SV2Bの特異抗体を用いた免疫電子顕微鏡法や、蛍光試薬であるFM 1-43によるリサイクリング小胞の選択的ラベル、GFP-SV2B発現系を用いた生細胞中のマイクロベジクルの共焦点レーザー顕微鏡による直接観察により解明した。すなわち、マイクロベジクルはplasma membrane直下にあるエンドソーム様の新規オルガネラを中継地としてリサイクリングしている。論文は作成中。(3)生細胞におけるマイクロベジクル内pHの実測に成功した。DAMP法を改良して成功した。pHは約5.1であり、グルタミン酸の濃縮のエネルギーが説明できた。このpH測定はpH測定領域の世界最高記録である。論文で発表した。さらに、本研究で得た成果を元にして、膵臓ランゲルハンス氏島においてグルタミン酸が伝達物質として働き内分泌機能を制御していることを実証した。すなわち、α細胞のグルカゴン分泌顆粒内にグルタミン酸も共存しており、低血糖刺激により放出される。放出されたグルタミン酸がnegative feedback機構によりグルカゴン分泌を抑制する。この知見は、血糖調節に新しい展望を開くとともに新しい糖尿病薬の開発に資するものである。さらに、新しいタイプのグルタミン酸化学伝達の実証である。論文として発表。
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