Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
アゲハの求蜜行動を引き起こす生得的色嗜好性には性差がある。網膜の構成には性差はないことから、行動で見られた性差は脳における情報処理の計算にあると予想している。昨年度に引き続き頭部神経節の構造の比較を、視覚情報処理を行う視葉と視葉からの出力経路に着目して行った。詳しく観察するために、視葉にある神経叢に対し局所的に蛍光色素を注入し特定の神経が作る経路を同定した。しかし、視葉からの出力経路について明確な性差は見られなかった。よって、嗜好性の性差は情報処理の計算そのものの差を反映すると予測した。私は、波長情報が求蜜行動としてあらわれるまでの過程のどこに性差があるのかを、生理行動実験によって調べることにした。波長情報が行動に結びつくまでの過程は大きく2つにわけられる。一つは色の認識が確立まで、もう一つは行動の判断・制御である。まず前者と後者のどちらに性差があるのかを調べるため、「色誘導」現象を観察する行動実験系の確立を行った。「色誘導」とは、ある領域がその周りをある色ですべて囲まれると、その中央の色の見え方が変化する現象である。これは色を認識が注目する領域とその周囲の領域の両領域からくる波長情報の比較を行った結果生まれることを示している。よって、この現象により色情報処理過程の一部を行動によって観察することができる。アゲハに緑の上でのみ餌を与えると、緑にのみ求蜜行動を示すようになる。この個体は、背景が黒または灰色とき多くの色紙の中から学習色を正確に選ぶ。ところが、緑学習固体は、黄色の背景に色紙を並べられると黄緑を、一方青背景のときは青緑を選んだ。これは、背景色によって選んだ色紙が学習色に見えたことを意味する。他の学習色の場合も、同様の色誘導現象が起こった。以上の結果から、アゲハに色誘導現象があることが明らかになった。今後、学習色と選択色の関係をより詳しくしらべ、雌雄比較を行う。
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