Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
「漁撈活動における技術についての概念提示」漁撈活動を取り上げた研究を振り返ると、各地の漁法や漁撈慣行、漁業暦、観天望気についての事例記述的な成果が数多く蓄積されている。そうした成果では、個々の漁撈技術に関する事柄には触れていても、漁撈活動における技術のあり方をまとめたものはない。本年度では、科学史や技術史、また生産や生業活動のなかで描かれてきた技術論を整理し、また著者の調査結果を踏まえ、一連の漁撈活動で発揮される技術について考察した。漁撈活動における技術とは、言語などの表現形式によって分節化できる知識に基づいて発揮される。その内容が個人から切り離せるため、特定の集団内で共有され、時代を超えて変化をこうむりながらも継承されていく。一方、経験従属的な知識に基づく技能は、分節化できる個々の技術を一連の漁撈活動のなかで統合化する働きがある。この技術と技能は、一連の漁撈活動を成り立たせるために必要であり、漁撈技術がいかに発展しようとも本質的には受け継がれる関係である。また漁撈活動における技術には、その特徴によって二つにわけて考えることができる。ひとつは、一連の漁撈活動のなかで、個人の能力に依存しながら発揮される技術「個人固有的な技術」である。いまひとつは、特定の集団内で知識(情報)を共有し、それを背景として発揮される技術「集団共有的な技術」である。実際の漁撈活動では、それぞれの総和が一連の漁撈活動を連続したものとして成り立たせている。また、従来漠然といわれてきた漁撈技術の発展には二つの方向性がある。ひとつは、人間の身体的な動作やそれに依存した道具が発展する「機械化」の方向であり、いまひとつは人間の知覚や記憶能力が外在化し発展する「装置化」の方向である。
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