中国仏教における大乗意識と「大乗非仏説論」の思想史的研究
Project/Area Number |
01510016
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
印度哲学(含仏教学)
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
木村 宣彰 大谷大学, 短期大学部, 助教授 (80103117)
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Project Period (FY) |
1989
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1989)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1989: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 大乗意識 / 大乗非仏説 / 鳩摩羅什 / 僧嵩 / 僧淵 / 毘曇 / 法身常住 / 小乗仏教 |
Research Abstract |
中国仏教は大乗が主流であることは周知の事実である。しかし、子細に検討すると「大乗非仏説」論が認められる。中国の仏典翻訳は後漢代の安世高と支婁迦讖に始まり、前者は小乗経を後者は大乗経を主としたが、俄に大乗・小乗という観念を判然と意識し区別することは容易ではない。現に中国仏教の初期に活躍した道安や慧遠の遺文を解読するとき、大・小乗の語は用いているが、その「大乗意識」は未だ不徹底である。中国仏教に於いて「大乗意識」が明確に認識され始めるのは、鳩摩羅什の訳経の頃からである。即ち、鳩摩羅什が訳出した般若・法華・維摩などの諸大乗経典や、中論・智度論などの諸大乗論には、「大乗と小乗」「摩訶衍法と声聞法」を明瞭に区別し、大乗をもって教理的にすぐれたものとして「大乗意識」を宣布している。そこで、その後の中国仏教は専ら大乗の立場に立ち、大乗経典の教理の究明に努め、未だ大乗と小乗の関係については強い関心を抱かなかった。しかし、注意深く資料を精読し、再点検するとき、小乗の立場に立って「大乗非仏説」を主張し大乗経典を批判した仏教者が認められる。出三蔵記集や高僧伝などを解読調査するとき、慧導や曇楽は般若経や法華経の所説を疑い否定している。また、僧嵩及びその弟子の僧淵は、大乗経典の涅槃経を誹謗した。慧導・曇楽については残念ながら関係資料が散逸し、その思想の詳細を知ることが出来なかったが、僧嵩は魏書釈老志によれば羅什の弟子で成実論を学んだという。僧淵は僧嵩の弟子で、成実・毘曇の学者であった。彼らは法身常往説をもって「非仏説」と為し、涅槃経を誹謗し、臨終の日に舌が爛れたという。要するに中国仏教史上に存在した「大乗非仏説」論者にとっては、諸法の空や法身常往を明かす大乗経典と毘曇や誠実の所説と矛盾する点が最大の問題であった。そこで本研究の成果を、特に仏身論に焦点を絞って論じたのが論文「竺道生の法身説」である。
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