Research Abstract |
まず理論的課題として、一般項目反応モデルを語彙理解力など認知的能力の尺度化に利用する場合、このモデルの原形の特徴である能力の個人内変動という概念をそのまま機械的に適用するわけにはいかないことが明らかになった。そこでその解釈を、平行項目の母集団の概念を用いて整合させた。(研究発表参照)これによって、一般項目反応モデルの認知的能力への適用上の矛盾を解決した。 コンピュ-タ・プログラムについては被験者母数中αを定数とする条件で項目母数a,bを推定し、その後で被験者母数α,βを推定する近似解のプログラムを作成した。さらに現在、4種のパラメタa,b,α,βを同時推定するためのプログラムを作成しつつある。また、それぞれ所与のパラメタ値a,bをもつn項目のテストをそれぞれ所与のパラメタ値α,βをもつN名の被験者が受けるという状況を、一般項目反応モデルにもとづいて生成するためのシミュレ-ション・プログラムを作成し、実際の語彙理解力尺度の構成に近い条件では、一般項目反応モデルがかなりよく適合することが明らかになった。さらに詳しい条件について検討中である。 日本語を母語とするものと、第2言語として習得したものの日本語語彙理解力の構造について、反応パタンの尤度の比較、従来の項目反応モデルとのAICなどによる適合の比較などについての分析を行った。その結果、一般項目反応モデルがこのような状況において能力の構造の特徴をとらえるのに有効であることがわかった。 この他、英語語彙理解力についての分析に着手し、すでに日本人学生・生徒の英語語彙テストのデ-タを収集し、これと、アメリカ人生徒のデ-タ(アイオワ大学ACTより提供されたもの)との比較分析を始めた。
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