Research Abstract |
近年,大都市地域で,特に老夫婦のみの世帯が著しく増加している。ところが,これまで老夫婦世帯がどのようなプロセスで形成され,またどのような生活をしているかはほとんど明らかされてこなかった。そこで,4年前,私は,東京都足立区において,65〜79才の妻がいる老夫婦のみの世帯をランダムに抽出し,老夫婦とその老親からみて最も頼りにしている子供の双方を対象にして,老親子それぞれの生活状況と老親子関係を明らかにしてきた。 しかし,この調査からは,老夫婦のうち,数年後に,もし夫か妻が病気をしたり,死亡したばあいには,子どもとどのようにかかわっていくかは,依然,明らかにならなかった。何故なら,それは,同一対象を追跡した縦断的な調査研究をしていないからである。そこで,1990年2〜3月に,老夫婦世帯の4年後の生活がどのような状況にあるのか,Followーup study(追跡調査研究)を行った。その変化を詳細に分析したいと考えているが,現在は実査が終わっただけであり,分析は4月以降になる。詳しい内容についての分析結果は,「社会老年学」(東京大学出版会),その他に公表するつもりである。 ところで,これまで老人家族に関する研究は,一地域での横断調査がほとんどであり,家族がどう変動していくかという縦断的な研究は皆無に等しかった。しかし,家族を構成する家族員は人間であり,特に老人などは健康状態や死などによって,その家族の構造や機能は大きく変化し,再編成をせまられている。当研究は、このような視点を考慮して同一対象を継続して追跡して,その変化を明らかにしようとしたところに大きな特色がある。これらの変化が解明されれば,われわれは家族の私的扶養の限界と公的な老人福祉サ-ビスがどのようにかかわっていくべきかを考察していくうえで,貴重な資料になると考えている。
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