明治前期における裁判離婚法の研究-東京地方裁判所判決例の分析-
Project/Area Number |
01520006
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Fundamental law
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山中 至 熊本大学, 法学部, 助教授 (90167718)
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Project Period (FY) |
1989
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1989)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1989: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 明治6年第162号布告 / 裁判離婚 / 離婚原因 / 妻の離婚意思 |
Research Abstract |
1.東京地方裁判所に所蔵されている未公刊の民事判決原本約630冊を調査して約6500丁に及ぶ離婚関係判決を収集できた。2.(1)「民事綜計表」によると夙に明治9年に「夫妻離別」・「妻取戻」訴訟があるが、東京地裁判決で現存する初出のものは明治10年10月19日「離縁送籍請求」訴訟である。ここでは夫は離縁を承諾しているとして、平素大酒を好み家事を顧みず屡殴打する夫から妻を救済している。また「妻取戻」訴訟として明治10年11月22日判決が見出せる。ここでは妻の衣類を無断質入した夫に対して妻が離縁を求めるのは情理の止むを得ない所であるとして、夫からの妻取戻請求を斥けている。(2)明治17年6月30日「離縁送籍不服ノ訴訟」は妻とその姉から夫に対する離婚拒否の訴である。夫は妻に気随我儘の所為があること、先妻の子を過酷に取り扱うことを理由に離縁を求めているのであるが、裁判所は夫の主張には証跡がないとして、夫の恣意な離婚から妻を保護している。また夫の暴行・殴打を到底夫婦の情交を継続できないものと認定して、妻側の離婚請求を認めている判決もある(明治14年6月13日「妻離婚」訴訟など)。(3)東京地裁の明治民法施行以前における最後の離婚判決は明治31年6月30日の夫からの「離婚復籍請求」である。この判決でも妻が夫の父母に対して重大な侮辱を加えたとする夫の離婚請求理由は認められていない。3.この判決に到るまでの明治10年から31年までの東京地裁の200件以上に及ぶ離婚関係判決を概観すると、裁判所において妻の離婚意思は保護されており、妻側の勝訴率も高いといえるようである。このことは私のこれまでの熊本・福岡・宮崎・佐賀・大阪の各地裁の裁判離婚研究の結果とほぼ一致するものである。中央の裁判資料によっても従来の通説であった夫専権離婚説が否定されたことになる。詳細な分析は近刊予定の拙稿に発表する。
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Report
(1 results)
Research Products
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