Project/Area Number |
01540402
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
構造化学
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長村 吉洋 慶応義塾大学, 理工学部, 専任講師 (50160841)
|
Project Period (FY) |
1989
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1989)
|
Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1989: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
|
Keywords | ベンゼン / 電子励起状態 / 分子軌道計算 / ポテンシャルエネルギ-面 |
Research Abstract |
芳香族化合物の基本であるベンゼンの励起電子状態の研究は、数多くの分光学的手段によって観測されてきたが、π→π^*遷移にともなう分子構造の変化や、光化学反応に関与すると思われるポテンシャルエネルギ-面の詳細については充分わかっているとは言えない。そこで、本研究では理論的立場からab initio計算によって、実験では得られない分子の状態を明らかにした。計算は充分な精度で励起状態を記述しなければならないので、電子配置と分子軌道の両方を同時に最適化するとMCSCF法を用いた。この方法を用いるとすでによくわかっている基底状態の分子構造や基準振動数はきわめて実験値とよく対応する。ベンゼンの最低励起一重項状態の構造は正六角型であるが、b_<2u>振動に関しては高波数シフトし、この事実は二次のJahn-Teller効果により理解できる。さらに第二励起状態^1B_<1u>では、正六角形構造からのずれが予想される。同様の変形がおこることは、最低励起三重項状態でも確認された。すでに、三重項状態については、ESRスペクトルから予測されていたが、本MCSCF計算の結果、キノイド型の方がアンチキノイド形よりもわずかに安定で、アンチキノイド構造は擬似回転における遷移状態になっていることが振動解析の結果、判明した。これらの構造変形にともなうポテンシャルエネルギ-面の様子は、分子振動モ-ドと電子配置間の相互作用により生ずる振電相互作用としても解釈されるが、定量的にその相互作用の大きさを求めてみると、各状態において特徴的なふるまいをすること、さらにはシクロブタジエンの様な反芳香族化合物における分子構造の変形を理解する上でもまったく同じ観点から議論することができること、など理論計算により、より詳しい情報が得られた。
|