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¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 1989: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
中部地方に2±0.7Maに噴出した上野玄武岩類の全岩微量成分組成に関し,蛍光X線法などによって正確度の高い分析を行った。その目的は「上野玄武岩類のマグマ根源物は西日本新生代アルカリ火山岩類の根源物と同様,非島弧的マントル物質であろう(氏家,1989)」との見解の妥当性を検討することにある。分析結果は,上の見解に否定的で,上野玄武岩類が島弧に特徴的なマグマ根源物から発生したことを強く示唆するものである。 N型中央海嶺玄武岩(N-MORB)の組成で規格化した液相濃集元素含有量において,今回の上野玄武岩類の分析値はTaとNbがCeとPよりも低く,西日本新生代アルカリ火山岩類のパタ-ンと異なる。このようなパタ-ンは,活動的大陸縁に噴出した玄武岩類によく見られ(Pearce,1983),上野玄武岩類の分布域内に第四紀成層火山(御嶽山)においても認められる。今回の分析値をTh-Hf-Ta関係図(Wood,1980)にプロットすると,すべて収束型プレ-ト境界(広義の島弧)の玄武岩類を特徴づける組成域内にプロットされる。またZr-Ti-Y関係図(Pearce and Cann,1973)においても,今回分析した上野玄武岩類の多くは島弧の玄武岩に特徴的な組成域にプロットされ,西日本新生代アルカリ火山岩類がプレ-ト内玄武岩類の組成域に位置するのと対照的である。すなわち今回の研究で得られた正確度の高いデ-タに基づけば,上野玄武岩類の根源マントル物質は“島弧型"であって,「西日本新生代アルカリ火山岩類の根源物から派生したもの(氏家,1989)」ではない。 以上の研究結果は岩石鉱物鉱床学会誌上に公表した。
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