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¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1989: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
生体機能を利用した高選択的有機合成反応開拓の一環として、従来殆んど例のない酵素による軸性分子不斉の識別を取り上げ、高性能不斉識別素子として期待される軸不斉ビアリ-ル誘導体の調製を検討し、以下の成果を得た。 1.加水分解酵素(リパ-ゼ)によるラセミ体の2'-置換1,1'-ビナフチル-2-オ-ル類のカルボン酸エステルの、不斉加水分解による速度論的光学分割を検討した。1,1'-ビナフチル-2,2'-ジオ-ルジエステルが豚スイ臓リパ-ゼ(PPL)によって、また1,1'-ビナフチル-2-オ-ルエステルが緑濃菌由来のリパ-ゼ(リパ-ゼP)によって高選択的に不斉加水分解され、ほぼ100%光学純度のヒドロキシビナフチル類を得ることができた。とくに、光学的に純粋な1,1'-ビナフチル-2-オ-ルを合成スケ-ルで得たのは本研究が最初であり、今後、この軸不斉体を用いる不斉反応の展開が期待される。 2.ホスファタ-ゼは生体系に広く見られる酵素であるが、不斉合成反応に応用した例は殆ど知られていない。我々は、水難溶性のヒドロキシビナフチル類をリン酸エステルにすることによって酵素反応に適した水易溶性基質となし得るというアイデアに基づき、ラセミ体ビナフチルリン酸エステル類のホスファアタ-ゼによる不斉加水分解を検討した。2'-位の置換基の効果、および種々のホスファアタ-ゼの活性について詳細に検討した。これより、仔牛腸由来のアルカリホスファアタ-ゼを用いて2'-エトキシ-1,1'-ビナフチル-2-オ-ルの光学活性体を光学純度77%で得ることができた。 なお、本研究の軸不斉ビアリ-ル誘導体の同定、定量、光学純度の検定等に当っては高速液体クロマトグラフィ-を随時利用した。また、上記1.及び2.の結果を説明する立体モデルを検討し、酵素による軸不斉識別機構についても考察した。
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