Research Abstract |
最近,日本でしばしば報告されているコイの喫食による食中毒事件の検索を行なった。 1987年東京近郊でおきたコイ中毒の際の残品を入手し,毒をこれから80%エタノ-ル抽出し,抽出液をDiaflo YM-2膜により限外ろ過して,分子量1,000以上を除去し,ろ液を濃縮後,Amberlite XAD-2やsilicagelカラムクロマトグラフィ-およびSEP-PAK C_<18>カ-トリッジに供して毒を分離し,最後にD-ODS-5カラムを用いるHPLCに供してこれを精製した。 精製毒のマウス毒性(腹腔内投与)はMLD_<50>2.6mg/20gで,その症状は麻ひ,後肢の痙れん,神経異常などであった。毒は2種の溶媒系〔(1)クロロホルム/メタノ-ル/酢酸/水(65:24:15:9),(2)プロピオン酸/酢酸イソアミル/1-プロパノ-ル/水(15:20:10:5)〕を用いる薄層クロマトグラフィ-において,10%硫酸またはリンモリブデン酸で発色させたところ,前者の溶媒系でRf0.38(褐色または青色),後者でRf0.22(同)といずれも単一のスポットを示した。毒のIRスペクトルは,3400cm^<-1>,1240cm^<-1>および820cm^<-1>に吸収極大を示し,分子中に-0Hおよび硫酸エステルの存在とともにステロイド骨格が死された。精製毒のFABマススペクトルからは,ポジティブモ-ドの測定でm/2 555(M+Na)^+,571(M+K)^+,577(M-H+2Na)^+が、ネガテイブモ-ドではm/h531(M-H)^-の各フラグメントイオンが認められ,これらの結果から分子量は532であることが推定された。 以上,コイ中毒原因物質を単離し,その性状の一部を明らかにした。
|