Research Abstract |
鉛の生体作用としてのポルフィリン代謝障害の他に,近年,赤血球中のPyrimidinー5'ーnucleotidase(P5N)活性が鉛暴露により阻害される事が明らかになり,この鉛によるP5N活性阻害の生体内意義と,これの鉛暴露指標としての有用性を検討した。 平成元年度に行った雄性家兎を用いた実験成績を詳細に検討し,本年度は更に実験例数の追加すべく,雌性家兎14羽を3群に分ち,鉛量として0(対照群,n=4),0.4mg/kg(n=5),2.0mg/kg(n=5)を週2回6週間に亘り靜注投与した。投与期間中,採血,採尿を毎週行ない,採取試料について各種の鉛暴露指標を測定,各指標の変動を血中鉛量と対比検討し,量一反応関係を求めた。また前年度の雄性家兎の成績と比較して,性差による各指標変動の差異を詳細に検討した。この結果,各指標中で性差が認められるものは,FEP(♂<♀),P5N活性(♂<♀),Hb(♂>♀)のみで,その他の諸指標(Ht,FeS,PbーB,ALAD,GOT,GPT,ALAーU,CPーU,)には性差はみられず,これら性差を認めないパラメ-タ-の成績は雌雄一活して論じてよいことが判明した。問題のP5N活性は鉛投与開始より最初に血中鉛が40〜60μg/dlになった時期で一度明らかに活性は低下するが,その後の血中鉛量の上昇に伴なう活性の低下は,血中鉛と明確な量反応関係を示さず,逆に血中鉛の上昇に伴ってP5N活性が上昇することもみられ,指標としてはALAーDやFEPに比し実用性に劣ることが判明した。P5N活性低下による赤芽球系細胞の核酸代謝障害に伴なって畜積する代謝物質の分離同定には,HーNMRは不適当で,HPLCによろざるを得ず,このためには,かなり大量の鉛中毒家兎を要する。また,P5N活性変動と血中鉛との量一反応関係を今一度精査する必要があるので,現在,さらに家兎による追加実験を実施中である。
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