1.うつ病患者による研究 うつ病の中でもリズム障害との関連が最も強いと考えられる季節性感情障害患者に高照度人工照明療法を行い、同時に睡眠覚醒リズムおよび直腸温リズムの測定を行い最小2乗法により分析した。対照としては正常健康人4名を用いた。治療方法、病状、治療効果、リズム成分を相互の関連のもとに検討した。 その結果、同療法を行った3症例中、1例では朝照射は無効で朝+夕照射で著効を示し、1例は朝+夕照射で著効を示し、1例は朝照射のみで無効であった。病期における睡眠覚醒リズムと体温リズムの位相角差は、健康人と差異はなかった。さらに病期から改善期への変化を見るとこれも正常健康人と差異が見いだされなかった。以上から、本症の位相変異仮説には否定的で、光周期性説または光量子説が妥当なように思われた。今後さらにより多くの症例で検討を重ねたい。 2.動物実験による研究 うつ病のリズム障害説の検討には、リズムに及ぼす抗躁うつ病剤の効果を検討するという方法が可能である。そこでラットの体温、行動、飲水の3リズムを測定しながら、同時にリチウムを2カ月にわたってポンプを用い連続的に腹腔内投与した。その結果、同薬はこれらのリズムの位相を変化させることはなく、また同調因子(光)の8時間後退に伴う再同調に際してこれを促進するような効果も示さなかった。以上から同薬がこれらの作用でもって臨床的に抗躁うつ病効果をもたらす可能性は否定的であると考えられた。
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