Research Abstract |
本研究の目標は「ウランおよび超ウラン元素を含む化合物の電子構造をバンドモデルの立場からどの程度理解できるか」を明らかにすることである。まず、当初の研究計画に従って、スピン分極とスピン軌道相互作用の両方をとり入れたセルフコンシステントな計算を種々のアクチナイド系化合物(UFe_2,NpFe_2 etc)について行った。スピン分極は大きな軌道成分を伴い、U化合物の場合には両者が互いに打消し合って、比較的小さな磁気モ-メントの値が得られ、実験と比較的よく一致するが、NpやPu化合貨では5f電子間の相関が非常に強く、バンドモデルの枠内では軌道成分の種が一定値を超えられず、実験との定量的な一致は期待できそうにない。従って、アクチナイド系化合物の電子状態を系統的に記述するためには、バンドモデルの枠を超えることが不可欠であるように思われる。そのような新しいモデルを模索するため、バンド計算の結果が、用期的アンダ-ソンモデルによって再現できるように、伝導電子のバンド構造およびっ民頂頃磨搭二頃擬般及混成行列要素を、LMTQ法の枠内で決定する計算を行った。それに基いて電子相関の効果をとり入れた計算を今後行っていく予定である。 本重点領域の実験的研究の一環として、陽電子消滅によるフェルミ面測定の実験結果が得られ始めたので、その理論計算を行った。まず、RB_6(R=La,Ce,Pr,Nd)について、系統的な計算を行ったところ、バンドモデルに基く一体近似の枠内で、実験結果を大体説明する計算結果が得られた。しかし、これは陽電子がイオンから比較的遠い所にいる電子の運動量分布を見るため、イオンに局在する4f電子の成分の寄与が小さいため、見掛け上一致しているためで、4f電子系のフェルミ面の測定手段としては、陽電子消減の実験は余り有効ではないように思われる。5f電子系については次年度調べる予定である。
|