蛋白質の立体構造のダイナミックスと統計力学基礎論からの検討
Project/Area Number |
01657506
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
郷 信広 京都大学, 理学部, 教授 (50011549)
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Project Period (FY) |
1989
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1989)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1989: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 立体構造 / ダイナミックス / シュミレ-ション / 状態遷移 / ミオシン |
Research Abstract |
柳田の実験によれば、ミオシン分子は、ATPl分子を分解してえられたエネルギ-をなんらかの形で分子内に蓄え、アクチン繊維上で1m秒程度の時間をかけて徐々に放出し、その間繊維上を分子の大きさの100倍程度滑る。分子構造の立場からエネルギ-は分子内にいかにして蓄えられているのか。この蓄えられているエネルギ-は、徐々に利用できなければならない。エネルギ-を小量消費する毎に、ミオシン分子は一連の異なる状態を遷移して行くと考えなければならない。この遷移はm秒の時間領域で起こる。蛋白質の立体構造の面からこれを見ると、ミオシン分子にはエネルギ-の異なる一連の立体構造があり、これらの間をm秒の時間領域で遷移して行くことになる。構造間の遷移はより一般的には立体構造のダイナミックスとして捉えられる。そこで、我々は、立体構造のダイナミックスのモンテ・カルロ・シュミレ-ションを行なった。58アミノ酸残基からなる球状蛋白質BPTIの室温におけるダイナミックスの50万ステップのシミュレ-ションを実行した。この様にしてサンプルされた立体構造をI(Instantaneous)構造と云う。いくつかのI構造から出発して立体構造エネルギ-関数を極小化した。得られた構造をQ(Quenched,急冷)構造と云う。Q構造の分布を調べたところ、立体構造空間内に階層的なクラスタ-を形成して分布していることが解った。これはエネルギ-曲面上の低エネルギ-領域が、階層的な構造をもって分布していることを意味する。統計物理学の分野でこのような構造を持つ系のダイナミックな振舞いが研究されている。それによればそのような系は一般に非常に幅広い緩和時間分布を持つ。このこととは、ミオシン分子に見られる一連の状態間の遅い遷移の仕組みを考える上で示唆に富んでいるのではないかと思われる。この観点からの研究を今後も深めて行く計画である。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)