Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
「研究実施計画」に記した、研究の目的(2)「近世前・中期漢文学と俗文学との比較研究」の成果として、(3)「山口素堂と江戸の儒者をめぐって」(「連歌俳諧研究」106号平16・2)を発表した。山口素堂は、芭蕉の漢文学に関するブレイン的な存在の人物であり、従来、素堂が幕府儒官の人見竹洞と交誼があり、芭蕉が素堂を介して当代の漢文学を吸収していた、と俳諧研究側から指摘されていたに過ぎなかった。本稿では、当時の幕府儒官の漢詩文集を網羅的に調査して、素堂が人見竹洞のみならず、広範囲にわたって当時の幕府儒官たちと交流を重ねていたこと、また竹洞も連歌や俳諧を愛好する風があったことなどを明らかにし、もって元禄期における漢文学と蕉風俳諧との交錯の様を解明した。また研究の目的(3)「従来の漢文学史の再検討」の成果として、(1)「亀井南冥・昭陽・暘州資料探訪」(「西日本文化」391号平15・5)を発表した。『平成13年度より、日本近世漢文学の資料発掘のため、長崎県立長崎図書館が蔵する未整理古典籍(総数約2万冊)の調査を実施したが、これらの内、長崎五島の医者で、代々が福岡藩儒の亀井家に古文辞学を学んだ、頴原家の旧蔵典籍のなかに、亀井南冥・昭暘・暘州の著述や遺墨が多数存在する。亀井家の著述は写本で伝えられ、流布範囲も限られており、例えば慶応大学斯道文庫にまとまって所蔵される。頴原旧蔵の資料は、これに次ぐ質・量をもつと思われ、今後これらを精査して近世中期以降の古文辞学の状況を明らかにすべき点を主張したのが本稿である。また同図書館所蔵の未整理古典籍調査の成果として、同図書館の前身であった「長崎文庫」、あるいは伊勢宮神社(現長崎市)旧蔵の「伊勢宮文庫」の詳細な目録を初めて公開したのが、(2)「「長崎文庫」創設始末」(「九大日文」3号平15・10)、(5)「長崎県立長崎図書館所蔵「伊勢宮文庫」目録」(「文献探求42号平16・3)である。なお、今年度は「近世前期漢学者の「文学」研究」と題する博士論文まとめ、平成16年1月に受理された。これは、近時に公刊する方向を模索している。
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