Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は、東西ドイツ統一により社会・経済・価値が変化し、それにより旧東ドイツ地域の大学教員も「西ドイツ化」したという「知的ヘゲモニーの西ドイツ化」の実体とその構造を、教授市場と人事の実体を分析することによって明らかにすることにある。特に本年度は、旧東ドイツ大学教員がどのような経緯で解雇されたのかに加え、旧西ドイツ大学教員の誰がどのような経緯で旧東ドイツ地域の大学に任命されたのか、フンボルト大学教育学部を中心にして、10年間のデータを収集した。調査を行った場所は主に、ドイツ国際教育研究所ベルリン分室、フンボルト大学教育学部、フンボルト大学古文書館である。附属図書館はヨーロッパ第二の規模を誇る教育関連図書館であるとともに、東ドイツ時代の教育科学アカデミーの資料がここに移管されている。また、教育科学アカデミーの教育学者で現在も研究に従事することのできている数少ない東ドイツ出身教育学者が当研究所で働いており、インタビューおよび研究交流を行った。旧東ドイツ地域の大学の改革に当たっては、旧東ドイツ大学教員に対して「政治審査」および「専門審査」があった。政治審査は、東ドイツ時代の国家保安省との関連、党との関連を問うものである。何らかのかかわりがあった者は旧体制に組していた者として、解雇される。政治審査をクリアしたものに対しては「専門審査」が課された。これまでの業績が評価された。ここに、いかに学問が評価されうるのかという問いが生じる。本研究では、「専門審査(業績の評価)とはいえ、政治的な配慮を含むものであり、結果として東ドイツ出身者による大学再編ではなく西ドイツ出身者による大学造りとなった」という仮説の妥当性を確認することができた。
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